悪い奴がいる。=ソ連。
貧乏で弱い奴がいる。=アフガニスタン。
弱い奴らを助けてやるおれたちゃ正義の味方。チャーリーかっこいいぜ!YEAH!
……という映画。
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予告編ではもっとコメディー色が強かった。
それはそれでいいと思ってた。むしろアフガニスタン問題という政治の問題を、
はっきりコメディとして描くことで、周知行動に繋がるのなら、それも有りだと。
しかしこれほど安易な作りだとは……
コメディならばもっと荒唐無稽な話にするべきだった。
が、中途半端であるため、荒唐無稽ではなく何も考えずに作った安易な話運びにしか見えない。
簡単に進み過ぎ。チャーリーがそこまで影響力を持っていることに説得力がないし、
その上、ソ連の立場もアフガニスタンの立場も全く描いていない。
単に「そこに悪者がいた。苛められている者がいた。俺たちが助けた」だけ。
現実の(過去とは言え、まだ歴史になるほど遠くない)出来事を(コメディではなく)描くならば、
もっと客観性を盛り込むべきだろう。ソ連にもアフガニスタンにもそれぞれの立場がある。
“アメリカ人にとっては”そんなの自明だから描かなくていいの?
でもこの映画を見るのはアメリカ人だけじゃないんだよ?
アメリカの視点でしか描かれていないので、アフガニスタン部分の映像がアホくさいほどやらせっぽい。
玩具爆弾があったのは事実だろうし、地平線まで続く難民テントも事実だろう。
しかしその映像があまりにも薄っぺらい。事実を材料としていても、真実味がない。
あれでアフガニスタンの痛みを1%でも描けていると思うのか。
どうしても納得できないシーンがある。
最新式の対ヘリ用バズーカ砲?で、ソ連のヘリを初めて撃ち落とす場面。
なぜあそこがコミカルに描かれる?
町の上空でヘリを撃ち落とすなんて有り得ない。成功したら落下して爆撃以上の被害が出るのは
目に見えている。アフガニスタン人を馬鹿として描きたかったのか?
ソ連のパイロットが殺戮の罪に震えていなかったと言えるのか?なぜ彼女の話をだらだらとさせた?
そうかい、アメリカは何しろバグダッドに落とす爆弾に、「バグダッドのベティへ」と落書きをする
兵士がいるようなお国柄だもんね。我が身からの類推で、多分こうなんだろうと想像するわけだよね。
自分の姿の投影。なるほどね。
なぜ今こんな映画を?
……泥沼にはまっているイラク戦争へのプロパガンダか?
こんな映画に出るトム・ハンクスもジュリア・ロバーツも軽蔑する。
貪欲に仕事を求めている新人じゃない。富も名声もがっちり握った、作品を選べる立場の俳優じゃないか。
もー、映画館で煮えくり返る思いを抑えるのがツラかった。途中で出ようかと思った。
こないだの「王妃の紋章」もそうだったな。最近映画に恵まれていない……
わたしの行いの何が悪いというのだ。
唯一良かったのは、フィリップ・シーモア・ホフマンの演技。渋いわ。
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……怒り心頭に発して帰宅し、他人のレビューをぱらっと見てみる。
映画館でも、先週公開にも拘らず既にハコは最少のものになっていたし、土曜日の夜だというのに
客は10人くらいしかいなかったため、人気がないことはわかっていたのだが。
が、その中に実に救われる感想があった。
それによると「これは安易に描くことによって、アメリカの対外政策を批判している作品だ」と。
ああ、そうであってくれ!
もしそうであってくれれば、わたしもアメリカを憎まずに済むよ。
そこに書いてあったことを見て初めて知ったのだが、監督は「クローサー」の人らしい。
あの映画は嫌いだったので、それを知っても好印象には結びつかないが、
しかしあんな後味の悪い、ひねった映画を作る人が、単純なプロパガンダ映画を作るとも思えない。
この安易さ、アホさは風刺だと思えば納得出来る。……作り方は間違っていると思うけど。
ぜひ、そうであってください。
……でもこれ、実話で原作有りなんだよね。映画はともかく、こういうテーマの原作を
風刺として書くとは思いにくいな。ううう。
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次に見る予定の「西の魔女が死んだ」も……原作好きなだけに、すごく不安だ。
「許せない」という感想になる可能性の方が高いからね。
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