ケイト・ブランシェットもコスチューム物もイギリスも好きなので、当然1作目も見ている。
……が、内容はほとんど忘れたなあ。あの白塗りの顔のインパクトしかない。
わりとまとまりのない話だった気がする。
今作の方が、多少メリハリはあったかな。
と言っても、話の部分ではどーも食い足りない感が残ってしまって不満。
役者と、美術部分と、実際の歴史部分によっかかって、台本が最小限と感じる。
どこが悪いっていうんじゃないんだけど……。
なんだろうね?見せ方に盛り上がりが足りない感じか?
やっぱり構成って大事だよなー。
直接関係ないが、それをしみじみ思ったのは、数か月前、田中芳樹「アルスラーン戦記」のアニメを
テレビで見た時。ちなみにストーリーはかなり忠実に(全体の4分の3部分までは)作ってあった。
原作は非常に面白いと思うので、それを忠実に作ればどうしたって面白いだろうと思ったのだが……
そういうもんでもないんだねえ。
キャラクターを「こんなんじゃないよなー」と思うのが最大の難点かもしれないが、
まあそれは字が絵になる段階で、ある程度は仕方のないこと。
天野喜孝が表紙の文庫で読んだ身には、萌え系のキャラクターデザインと、
その声はツライものがあったが仕方ない。
が、台詞のやりとりを忠実に写しているわりには、話がさっぱり盛り上がらない。
これはやっぱり作り手の創造力が足りないってことなんだろうなー。
アニメならアニメとして本来ならまた別な創造になるはずが、原作に絵をつけるという程度の
意識しかなかったのではないか。手を抜いているというのとまた違うが、創造の重要性が
認識されないまま作られてしまったような……
いい例えが思い浮かばないが、例えば似顔絵を描くに、似ているということはもちろん大事だが、
それと同時に絵としての良さもなきゃいけないんだよね。
そこを、似てることばっかり気にして絵としての個性とか力強さが忘れられているような。
そんな感じ。
今作も、歴史の流れをたどること(忠実に再現するという意味ではなく)に気をとられて、
映画としての何かの部分を忘れている。それが何かというのはいまひとつ不明だが。
うーん。クライマックスとテーマの整合性か?
テーマ。はエリザベスの苦悩。特に愛の悩み。と成長。
そして映画としてのクライマックスは、スペイン無敵艦隊との決戦。
わたしはこの「無敵艦隊との決戦」と「エリザベスの成長」がうまく結び付けられてないような
気がするんだなあ。
全然的外れってわけじゃないけど、女王の内面世界においてのクライマックスは
そこじゃないだろうという気がする。映画の前半で一所懸命描いて来たのは、
ローリーへの愛の苦悩でしょ?その部分がいつのまにかどっかに行っちゃってませんか?
いや、無敵艦隊との戦を経て、さらに女王としての自覚を増し、その為にローリーへの未練を
断ち切ることが出来た、という流れはそれほど不自然ではない。ないのだが、なんかね。
微妙に軸がぶれてる気がして落ち着かない。なんか散漫と感じる所以。
他には、ローリーの愛の描かれ方が気になる。べスに対する愛と女王に対する愛。
これはずいぶん種類が違うものだと思うが、そこらへんが出てなかったと思うなあ。
キスのシチュエーションも同じだったでしょう。同じじゃ変な気がするが。わざとか?
クライブ・オーウェンは好きな役者なんだけど、やはり器用さはないのか。
それとも監督が恋愛を描くのが下手なのか?
史実のエリザベスが甲冑を着て前線に出ていたとは知らなかった。
いや、でも映画で馬に乗せたまま演説をさせたのはまずかったんではないですか。
ブランシェットはどうしても気を取られただろうし、
見てるわたしはもっと気を取られた。「ああ、馬がちっとも言うことをきいてない……」
甲冑は甲冑でいいから、馬から降りてもいいじゃないか。
それにその画では、どうしたって「指輪」を思い出すんだし。
比較すれば、ヴィゴ・モーテンセンやバーナード・ヒルには及びませんよ。
思い出すと言えば、海戦部分は「なつかしや、パイレーツオブカリビアン」。
まあ海戦はみんなこんな感じでしょうからこれは別にいいけど。
しかし帆船は美しい物体だねえ。帆船の群生?シーンは好きだった。
大聖堂でロケが出来るのはヨーロッパの大きな強みだけれど、
大聖堂がどうしても大聖堂にしか見えなくて困るんだが……
冒頭、スペインの王様と王女様はどうして大聖堂にいるんだろうなーと。
しばらく経ってから、あ、あれは王宮のつもりなのかとようやくわかったりする。
地元の人たちは違和感ないのかな。エリザベス時代の王宮の広間はイメージ出来ないけど。
(私室部分に関しては最後の赤ん坊を抱いたシーンのセットが時代的に合っている。
しかしあの部屋にあの正装は違和感)
まあ、日本でも天竜寺や青蓮院で江戸城のロケは出来そうだから、そんなもんかな。
もちろん、ブランシェットは素晴らしい。ジェフリー・ラッシュも良い。
アビー・コーニッシュは初だが可愛かった。スペイン人もいい!
(ちなみに、この映画はスペインで上映出来たんでしょうか?)
が、パンフレットを見てとても驚いた。
レストン役のリス・エヴァンズ――「ノッティング・ヒルの恋人」のスパイクですって?
ありえません――!
別人じゃないかあ!顔の輪郭まで違うよ。
脳が納得することを拒否する。何とかしてください。
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