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◇ モンゴメリ「丘の家のジェーン」

あー、この公園も変わってないなー。
すべり台、お気に入りだったよなー。鉄棒も、昔はもっと高く感じたのにねえ。
向こうの方にある木、前はわたしの背くらいまでしかなかった。成長したんだなあ。
何年ぶりだろう。子供の頃のわたしは、いつもここで遊んでいた。

……というような気分にさせる本。
何しろモンゴメリは「赤毛のアン」シリーズの作者。あれはわたしにとって大事な作品だから。
久々に読んだ彼女の作品は、ただ単に懐かしいというよりも、久々に訪れたおばあちゃんの家のように
馴染んだ空気でわたしをすっぽり包んでくれた。ぬくぬくした居心地の良さ。
大人になってからのこんな出会いもいいもんだな。

初めて「赤毛のアン」を読んだのは小学校6年生の頃。だが、すでにヒネた人間だったわたしは、
少女小説なんて!と、この類を頭から受け付けなかった。
「小公女」とか、好きなものもあったんだけどね。しかしこの類は低学年で卒業したと思っていた。
なので、小学校6年時のクラスメイトがしつこく、読め!と言ってくれなかったら、
多分出会えなかっただろうな。
面白かった。すごく。すっかりはまった。
友達に借りて、自分では買わなかったんだけどね。

再度出会うのは大学受験の直前。……どうも受験から逃避をしていたらしい。
試験直前の2週間くらいでシリーズ10巻を順番に買ってきて読んでいたような気がするなあ。
一番有名な「赤毛のアン」より、それからさらに育った2巻目3巻目が好きだった。
「アンの青春」とか「アンの愛情」とか。まあ、当時の自分としてはまさに同年代の話だしね。

映画も見たなー。
ミーガン・ファローズ、と何とか・クロンビー。好きだったなあ。何しろギルバート役のクロンビーは
高校の時好きだった先輩に似ていた。……って、何を言っているのだ、自分。
すごく時間が経ってから作られた2000年の映画は、一体何を考えてアンの名前をつけたのか、
製作者に正座で釈明して欲しいほど、「アン」の映画としては許せない作品だったが。

いやいや、「丘の家のジェーン」の話でした。

「アン」に比べれば物語の広がりはない。
ジェーンもアンほど魅力的ではないしね。前半の舞台がトロントという都会であるせいか、
あの牧歌的なプリンス・オブ・ウェールズと比べると、かなり時代が違うイメージ。
もっとも書かれた時期は「赤毛のアン」から数えれば30年後だから、実際に時代が違う。

前半は、これでもか、とジェーンの不幸を書くから少々辟易したけど。
で、真ん中で幸福な島の生活を書いて、最後は急転直下大団円。
これだけを読めば、大して褒められた作品ではないだろうなー。

楽しく読めたのは、やはりアンのせいだ。プリンスエドワード島もなつかしかったし。
この本を貸してくれた人は、「アンがものすごいチョイ役で出てくる」と言っていたような
気がするけど、かなり気をつけて探してたのに見つからなかった。出てこなかったと思う。
他にも、島の人々の噂話で出てくる人名が気になった。アンシリーズで出ていた誰々の子供、とかいう
立場の人が紛れ込んでいるんじゃないかと思って。
わたしは結局誰も見つけられなかったんだけど(脇役だとさすがにもうほとんど忘れてますわ)、
こういう物探しの魅力もある本かも。

丘の家のジェーン (新潮文庫)
モンゴメリ 村岡 花子 Lucy Maud Montgomery
新潮社 (1960/09)
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