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日展100年&第54回日本伝統工芸展。

どちらもさくっと見た。

日展は彫刻が良かった。
絵は――特に初期の絵は、どうも何かに似ていると感じるものが多く、今ひとつノレなかった。
つまりルノワール風、ルオー風、ルソー風。先入観があってそう感じるのかもしれないけど、
黎明期なだけに、やはり西洋の影響は強かったのではないか。
逆に、非常に印象派っぽい――というより、なんのことはない、モネに良く似たモチーフで
描きながら、まったく光を取り入れてないような絵とか。どこかまがいものを見るような気持ちになる。
日本人が描く西洋画が落ち着いてくるのは、戦後あたりなのかな。

彫刻も、実はバリバリ西洋風に味付けされているんだろうけどね。
荻原守衛の「女」なんて、多分ロダンにどっぷりつかったものなんだろうけど。
でも彫刻の方は、よくわからないから気にならない。

わたしは、新海竹太郎の「ゆあみ」が好きだった。惚れ惚れと見た。
きれいな身体だなあ。筋肉の所在を感じさせない、柔らかい女の肉体。
女の身体でも筋肉を表現する彫刻家も多いけど、やはり女は脂肪でしょう。
「ゆあみ」は日本的理想美――理想という言葉を突き詰めて考えれば、日本的とつけることは
可能か否かという問題はおいといて――である。
それとも、これは単にわたし好みのカラダってだけか?細くもなく、太くもなく。足長く、お尻も締まって。
清らかである。そして、柔らかである。

新海竹太郎は山形出身で、山形美術館に狭いけれども専用の展示室がある。奥の方だから、わかりにくいけど。
ここには甥の新海竹蔵の作品も併せて展示されており、それぞれいくつかずつ好きなのがあるな。
穏やかだ、彼らの作品は。

エキシビ中、最も注視したのが冨永朝堂「五比賣命」(イツヒメノミコト)。
5人の女性群像。古拙な表現。表現は生硬で、リアルからは非常に遠い。
前史時代から始まる日本の彫刻のエッセンスを感じた。
木を感じ。百済観音を感じ。神道を感じ。5人の顔に浮かぶのは、まさにアルカイック・スマイル。
上手いとか美しいとかではなく、非常に懐かしい気のする彫刻。
(しかし衣の襞の表現、角度によっては少しうるさく感じた。)

それと全く違う方向でじっと見たのが、山崎朝雲の「雪舟像」。
「五比賣命」が等身大だったのに対して、「雪舟像」は小さい彫刻。こちらはリアル。
顔をじっとみていると、動き出しそうだった。
が、サイズが小さいだけに、思い返してみると、玩具のような印象が残っていることも否めない。
あと雪舟のイメージに合わなかった。(よく知らんけれども。)
もっと穏やかな雰囲気の人であった気がする。

澤田政寅「白鳳」は、やはり古拙方向の女神(っぽい)像なんだけど……これは首を傾げた。
人体構造に全くそぐわないポーズだった気が。
写実性を狙った作品では全くないが、わざわざあのポーズにすることもないと思うのだが……
タイトルが白鳳だから、鳥の化身としての女神像かね。それにしてもなあ。

あと面白く見たのは、広川松五郎の「臈染文武紋壁掛」。
2メートル四方位のタペストリーなんだけど、デザインが文武、それから和洋混交で面白い。
般若面、女面、西洋風刀剣、雅楽楽器、西洋楽器と色々な物が盛り込まれている。
間違い探しの感覚で隅々まで見た。
色合いも良かったしね。たしかワイン色と渋い金……明るい茶色や明るめのグレイが主に使われていたと思う。
遊び心を持って制作された作品だと感じた。

……などなど、気になった作品はそれなりにあったのに、物売りコーナーに来て見ると、
どれも絵はがきになっていないではないか。
ほとんどの日本の美術館は、展示物の撮影は不許可。だからこそ絵はがきとかで
手元に留めておきたいんだけどなあ。
図録を買うという手もあるけど、わたしは買ったことがない。図録は高いし、重いし場所ふさぎ。
気に入らなかった作品に関しては、特に手元になくてもいいわけだし。

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第54回日本伝統工芸展の方は、例によって例のごとく。
4、5年に1度くらい行っているけど、いつもみな水準以上、……というより、
あまりとんがったデザインのものがないので、きれいで受け入れやすい。
お金持ちなら、半分くらいの作品をごっそり買ってもいいなと思った。

が、実際そのつもりになって見てみると、すごく欲しい!というものもなく。
だいたい、ほとんどの作品が一般人にはでかすぎる。お金持ちならそれなりに使用用途も
あるのかもしれないけど、わたしの生活スケールでは、こんな大皿や花瓶はいらんわ。

今回は人形が気になった。ふだんそれほど好きなジャンルではないのだが。
みな優しげな人形ばかり。和風が多かったので余計そう感じたのかな。
何事によらず、創る行為は自分を表さずにはいられないものだと思うのだけど、
ああいう優しげな人形を作る人は、普段どういう人なのだろうかと気になるよ。
人間はある程度バランスをとる生き物だから、人形に優しさを吸い取られて、
日常生活はかなりキツイ性格で送っていることもあり得るか。

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