これは歴史ドタバタってことでよろしいか?
最初は文章の軽妙さが好きだったんだけどな。キャラクターもイヤミなく。
が、話も半ばまでくるとあまりに薄すぎて首を傾げる。一体いつになったら小説になるのだ?
これまでのところは、細切れのシーンを繋げているだけだぞ。
ひっかかったのは、シャンボール城にあるダヴィンチの螺旋階段部分から。
螺旋階段の描写そのものに違和感を持ったことと、ここで洗礼者ヨハネの絵に言及する意味は全くあるまいと思ったので。
普通であれば、多少余計なことを書いても、それがバランスを崩すほどの分量じゃなければ
あまり気にならないはずが、この作品の場合、このあたりの薀蓄が浮くと感じるほど、
他の中身が薄かったんだよね。薀蓄というほど凝った中身じゃないんだけど。
作者は書きたいことを細切れに並べているに過ぎない。
カザノヴァ、サン・ジェルマン、ポンパドゥール夫人、ルイ15世、ロシア側の面々……
わたしは歴史ファンタジー、かなり好きなほうだけど、歴史上の人物をただ便利に使うのはずるい。
彼らの魅力的なキャラクターを使わせてもらうならば、その代償として下調べはきちっとやって欲しいぞ。
この本に出て来る人々は、資料を1冊ずつしか読まずに書いたような薄さだ。
下手するとネット上で調べただけで書いたようにさえ思える。
知っていることを全て書いても仕方ないけど、書かないけれど知っている、ということの量で
厚みが出てくるもんと違うかね。
キャラクターと文章の嫌味のなさは魅力だと思うんだけどなあ。ま、薄い……のかもしれないけど。
文章はね、漂うユーモア感になかなか、と感じるところもあったんだよ。でも話そのものが……
これは実は日本ファンタジーノベル大賞の受賞作品なのだが、こんなんで大賞か?と思って確認したら、
大賞該当無しの年の優秀賞だった。不作の年だったんだろうなー。
あとタイトルがいまいちですねー。むしろ話的には「仮装令嬢」だな。
字にすると意味が確定してしまうのでアレだが、「かそうれいじょう」なら、最後のオチにもかけられるし。
しかしあのオチ(というかどんでん)はどうしてなんでしょうねー。まったく意味を感じないのだが。
まあいいけどさ。多分この人はもう本を書かない人だと思うし。
適当に書いて欲しくはないしね。やっぱり書く人は普通人ではないんだよ。
さて、上記のように書き終わったところで初めて知った驚愕の事実。
……この話って主人公も実在の人物だったの!?
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そんな雰囲気はかけらも感じなかった。
わたしの無知は恥じるとしても、なんていうか……。え~~~……だなあ。
……それとも、まるでヘリウムガスのようなこの軽さに積極的な価値を認めるべきなのか?
いやいや、やはりこの紙絵人形みたいな歴史上の人物ではあかんやろ。
まさか作者はこの本1冊だけを種本にして……これを書いたんだったりして……。
有り得そうで怖い。
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