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< パイレーツ・オブ・カリビアン~ワールド・エンド~ >(atがないとあるとじゃ大違い)

面白かった!堪能した。

事前に、「話を詰め込みすぎてわからない」という事を聞いていたので、どうだかなー、と思っていた。
ただでさえ、主役が3人もいて(スパロウとウィルとエリザベス)それぞれの動きを追おうとすれば時間がかかるのに、
2作目で復活したバルボッサもいて、3作目初登場のサオ・フェン(チョウ・ユンファ)もいて……
どう考えても、普通の尺で収めるのは無理だよねえ。もったいないね。

サオ・フェンが一番もったいなかった。チョウ・ユンファなんか、もっと深みのある役柄を
させたらどんどん味が出て来る人なのに、ほんの表層しか表れてないね、あの話じゃ。
何より、あの美しいハゲ頭が傷つけられているのは許せないわ!
思わずなでくり回したくなるスキンヘッドが彼のチャームポイントなのにっ。
一応見せ場は死の場面で、その時の演技自体は悪くないんだけど、これも詰め込みの弊害で
突然死んでしまうからわざとらしく、死の重みがほとんどない。あー、もったいない。
わざわざチョウ・ユンファを引っ張り込まずとも、充分に時間は埋まったと思うけどなあ。

まあ、ストーリーに関して言えば、文句はたくさん出て来るけれども。
ただ始まってから気づいたが、よく考えれば、実はわたしの方も2のストーリーを全く忘れていた。
スパロウ船長が死んだ?ことさえ忘れていたよ。覚えていたのは、最後のバルボッサの登場シーンと、
クラーケンのみ。2と3は連続性が高いからね、復習すべきだったかも。
でも、これはセットと画を見る映画なのだ!筋は二の次!話がわからなくてもかまわないのだ!
……と、かなり最初の段階で割り切れたので、スムーズに作品にシンクロできた。
あとはひたすら画面を嘆賞。惜しげもなくつぎ込んだ金と人の存在がひしひしと伝わる。

映画の正解はひとつではないが、正解のうちのひとつはスペクタクル。
いいんじゃない?画に特化して作った映画も。今作品からは「見せるぞ!」という意気込みを感じる。
その部分が充分に水準をクリアしているから、いいよ、ストーリーは添え物でも。
甘いか?

とはいえ、画も「またか」部分はあったけれども。船上の戦闘シーン、そりゃ海賊映画だから
長いのは当然とはいえ、1・2・3合わせれば正味何分になったかね。わたしは別に戦闘シーンを
求めてはいないので、多少長く……も感じなかったんだな、今回は。シッチャカメッチャカの様相を
呈してきて、「もう何でもやりなはれ~」状態にまでなっていたのが良かったのかもしれない。
パワフルさに負けた。呆れつつ楽しかった。この感覚は中国カンフーコメディに抱く
「すごいなー」「いや、でもやりすぎ」が相半ばする感覚に少し近い。

画として(正統的に)良かったのは、カリプソの大渦に巻き込まれつつ対峙する
ブラックパール号とフライングダッチマン号。いやー、あれは他では見られないと思いますよ。
あれを思いついた脚本家?監督?は偉い。ただでさえ帆船VS帆船の肉弾戦(?)は充分に絵になる。
普通ならそれだけで満足するところ、渦というファクターで、もう一捻りしたのは上等だと思う。
第3作だからこそね。それこそモヴの白兵戦は飽きるほど見てきたわけだし。

非正統的に良かったのは、……鼻、でしょう。
画というか……画として褒めるかどうかは微妙だけど。しかし画だよね。やっぱり。
わたしは勘の悪いことに、まさかあれがヤツの鼻だとは思わなかった。ま、狙ったミスリードに
まんまとひっかかった良いお客さんだ。それにしてもさー、声を大にして言いたいけれど、
1,2,3ともにヤツの登場シーンは大好きだよ!!
1はあの上陸シーンがものすごく好き。この辺の素直なお笑いセンスがツボ。2はお約束的だが、
まあ期待通り。3は……これは期待以上、想像以上。(この「想像以上」も映画の正解である気がする。)
……ところで、ヤツは「チャーリーとチョコレート工場」でもオカシな登場の仕方をしてましたね。
変な登場が基本設定になっているのか。

あと好きだったのは、ものすごくありがちなシーンではあるんだけど、
エリザベス演説→海賊長達立つ、の流れ。
あれ系に弱いんだよなー、わたしは。手もなくやられてしまう。「王の帰還」でも烽火のシーンがやたらと好きだった。
キーラ・ナイトレイ、演技的に健闘したと思いますよ。
だってあそこまでの流れで、話としては相当無理を重ねてる。
ベケット側のあの大艦隊は不可能ですから。実際を考えて、(イメージ的に。詳しいことは知らん。)
東インド会社・海賊・あの海域という条件で、ベケット側がそんな何十隻もの船を調達し、
対して海賊長たちがわずかな船しか持たない、というのは納得出来ないのだよ。
「え~?」と思った直後の演説だけに、白々しく響く可能性は多分にあった。が、及第点の説得力。
同じ役割だった「キングダム・オブ・ヘブン」でのオーランドより迫力があったんじゃないかな~。

笑ったのは「結婚式」と「蟹」。いくら何でも、というアホらしさが楽しいけどね。(これも中国カンフーコメディ的。)
タコ船長がオルガン弾いてる絵柄は、まんまファントムやんか!あともう1つ、なんかの
パロディシーンがあったと思ったんだけどなー。忘れてしまった。
それから、なんとスパロウ船長のおとーさまが!これは本当にびっくりしたよ。
最初に「邪魔だ、坊主」なんて言っているのも、単に若造の意味だと思ってたのに。
ほんとにアンタの坊ちゃんなんかい!?たしかに似てると思ったけどね。
最後の最後、クレジットの後で後日譚がついたのは良かった。10年経って外見変わらなすぎやん!
とは言いたいが、下手に老けさせるより嫌味がなかったよ。最後の最後でワンシーンだけ
中年の二人を見せても仕方ないしねー。

言いたいことはもっとあるけど、きりがないので終わりにしよう。
が、以前「デッドマンズ・チェスト」で思った、“1は正統ディズニー、2はB級超大作、
3では一体どうするつもりなんだ?”という疑問に対する答えは見事に出たな。
「3は制作側も観客も、思い残すことはないくらいの(歯止めの利かない)スペクタクル」。
どのシーンも全力投球。きっと膨大な撮影フィルムを削って削ってああなっちゃったんだろうなー。
みんな、切るには惜しい映像ばっかりだったに違いない。
そう考えると、話はとっちらかっているけど、まあ無理はないかなーって。
やっぱり甘いか。でもまあ甘くてもいいか。久々に満足させてくれた映画だからね。

……あっ!でもエンディングは全然許せないぞ!
なんであそこでベケットがあそこまで茫然自失する必要がある?エンデバー号の、やたらと並んだ大砲、
発車準備まで整えておきながら命令一つ下せないほど取り乱す必要が?
副官も、あの状況で逃げる命令は出せても、攻撃命令は出せないのか!敵勢力に数倍する味方の帆船は
一体何をしに出てきたんだ!あれじゃ書割だと疑われても仕方ないよ!
(映画の技法としての書割ではなく、ベケットが実は壮大な舞台装置を制作して、あの帆船群は
実は書割で、戦うことなど出来なかった(笑)とまで考えなければ、あの意味無し感は解決出来ない。)

それでも、面白かった。ありがとう、監督、制作、デップ、ジェフリー・ラッシュ。

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1.スペクタクル
2.想像以上
3.繊細な空気感(これは今作品にはないけど)
今のところ映画の正解は上記3点。他にもあるはずなので、どんどん増やして行こう。

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