エジプト展だ~♪と思って行くとちょっと間違う。
これはあくまで「吉村作治」と「早大」エジプト40年のエキシビ。
もちろんエジプト展なんだけれども、展示品はある意味小粒。どの程度を期待しているかにもよるが。
何しろ最初に出て来るのが、少年期~青年期にかけての吉村先生の写真と、小学生の頃巡り会って、
エジプトに興味を持つきっかけとなった「ツタンカーメンのひみつ」の児童書ですから。
それって普通は、わざわざガラスケースに入れて展示するもんと違う。
が、吉村先生の昔の写真は実はけっこう面白かった。引っ込み思案な少年の表情をしている。
今は髭など生やして、飄々とした(あるいは少々図々しい感じの)おじさんだが、
元々はナイーブな少年だったのかもしれない。ちょっと見方が変わった。
展示自体は、エジプト発掘後発国の日本で吉村作治と早大はがんばってきたな、というのがわかる良い展示だと思うよ。
わたしは「世界ふしぎ発見!」をほぼ毎週見ているから、吉村先生の発見はだいたい了解している。
イパイの墓、太陽の船、ピラミッド音波検査、マスタバ墳(?)。
ただ、最初の大きな発見だったらしい彩色階段のことは知らなかった。
知らなかった故に一番印象が強かった。敵を卑俗な形にして装飾品などに付けるのは
わりとあちこちで行われているけど、階段に描いて踏んづけて歩くというのは発想として面白い。
そして、完全にデザインとして捉えられているところも面白い。
描かれたヌビア人その他も、卑小に描かれるでもなく獰猛に描かれるでもなく……
象徴としては相当ダイレクトだけれど、妙に淡々としているね。
展示の目玉はやはりセヌウの墓か。木棺とミイラのマスクが来ていた。
木棺はかなり小さい。小さい割には深さがあって、あれから中身を取り出すのは相当苦労だったのではないか。
元々の製作者はそれも含めて深く作ったのかな?バランスが悪いと思ったもの。
セヌウのマスクは、それ自体は良かったけれども、ミイラからの復元CGとマスクの違いにがっかり。
わたしは常々、エジプト美術の写実性は並じゃないと公言しているのだけれども、
本人想定図があれでマスクがあれなら、写実性も何もないじゃないですか。全然似てない。
CGの精度って基本は大したことないとは思うが、セヌウは漫画のキャラクターみたいな顔で、
普通のおっさんだった……。
うーん、総じて作品としては、これというほどの面白みはなかったかなあ。
ああ、でも各種レリーフがなかなか。わたしはレリーフ好きなので。
薄く、わずかにふっくらと盛り上がる人物や生物に温もりを感じる。
遥か過去にそれを彫った人の手の温度を感じる。
三千年後、自分の彫ったものが遠い東の国に来て鑑賞されることなんて、この作り手は
きっと想像すらしなかったに違いない。そう考えると歴史はやはりロマンがある。
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