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◇ 奥泉光「鳥類学者のファンタジア」

うーん。微妙。面白くないことはないのだが……。

とにかく気になるのは「厚い」「長い」「仕掛け」だ。
^わたしはこの辺りでノレないので、面白いとは言えない。
特に一文が長いのが。前回読んだ「グランド・ミステリー」でも思ったが、 
「長くするために長い」ような気がして、そういうのはちょっと。長いだけなら気にならないと思うんだけど。
文と文を繋ぐために「~わけで」を使うのも好きじゃない。括弧の多用も小説においては安易だと思う。
軽薄な文になってしまう。
三人称と一人称を故意に混用し、とってつけたように笑いを取るのも、どうも軽く思えて。

まあ、作者はたしかに軽さを目指したんでしょうけれどね。
仕掛けが多いのも、確信犯だからしょーがないし。つまりは合わないんです、わたしの好みとは。

音楽、とりわけジャズの話なので、ジャズについて何か知っていればもっと面白い話なんだろう。
演奏者の主観をかなり書き込んでいるが、作者は演奏者でもあるんだろうか。
そうではなくて、想像力及び取材によってあれだけ書いたのなら、それはなかなかすごい。
ただ、実際の演奏者はどう感じるんだろうなあ。そこは訊いてみたいところだ。

最後の4分の1くらいでスピードアップして面白くなった。ここは止まらずに読めた。
力技で終わらせたような気もするけど、パワフルなのはそれほど嫌いじゃない。
やっぱりミントンズ・プレイハウスを持って来たことが読後感の良さに繋がってるんでしょうねー。
これはタイムスリップもののお約束というか、ありがちな展開だが、
別に驚天動地のどんでん返しを期待しているわけでもないのでむしろ歓迎する。
それから「宇宙オルガン」のイメージも好きだった。スケールでかくて、ロマンがあるね。

ただ、全体的に見れば、ジャズと神秘主義的ロマンと、タイムスリップSFを組み合わせたのは
過剰な気がする。せいぜい二つくらいでいいような気がするんだよなー。
このごてごてさが性に合わん。

ごてごてと言えば。「グランド・ミステリー」でも思ったことだけど、この人タイトルうがちすぎ。
この話でなんで「鳥類学者のファンタジア」?どこをどーやっても鳥類学者なんて出てきませんがな!
……某amazonで見かけた意見によれば、チャーリー・パーカーの渾名が「バード」であるところから
「バード(に代表されるジャズ)ファン」→「鳥類学者」……。
それが正鵠を射ているのかどうかは不明だが、もしそうなら、……トホホでございます。

人間、素直さが大事だよ。

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奥泉 光
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