大石静は現代の脚本家で相当な売れっ子だろうに……わたしはほとんど
作品を見たことがなかった。
2008年の「おせん」は原作を知ってる者としては全然ダメなドラマで、
何とか全体の半分くらいまで見たけど、結局脱落したんだと思う。内容がなかった。
2019年の「永遠のニシパ」は見た。単発のドラマ。
1度目見た時は途中で脱落、2度目に見た時は何とか完走。
まあでもやっぱり話が薄いと感じた。
全方向的に下調べが足りてませんわねー。あと3倍くらい知識を入れて書けば
良かったんじゃないかな。
あ、そしてこの間の「光る君へ…」は……源氏物語好きのわたしは
15分見ただけで耐えられないのよ。考証的に。
序盤も序盤で不満を持ち。第一回の前半で離脱した。
まあ、でもそういう不幸な過去(?)があった脚本家だということも覚えておらず
本作を見てみたら(過去の不幸な出会いについては最終話まで見てから知った)、
これはすごく面白かったですー。気に入っている。
今クール、ドラマで生き残ったのはこれだけだったのよね。
「DOPE」は第一話の10分くらいで止め。
「誘拐の日」は役者と設定はすごく良くて、見たい気持ちはあったけれども、
役者と設定以外の肉付けが全然ダメで。
斎藤工も好きだし、あの子役が達者なことは知っていたし(達者すぎて、今回の役柄では
鼻につくかもなーと案じたが)、もうちょっと脚本を練ってくれていたら……と残念だった。
そこで最後の頼みの綱として本作ですよ!
コミカルなサスペンスというのは新機軸でしたね。面白かった。
しかもコミカル部分が面白くてさ。それもコミカル8割サスペンス2割だから、
サスペンスでシリアスな話をした2秒後にコミカルシーンに反転し、
おおう!もう?と驚く。
そういう時に、阿部サダヲと松たか子の演技力が発揮されるのよねええええ。
この自由自在感。凡百の役者なら下手にコミカルを意識しすぎてふざけすぎちゃう
可能性もあるが、ほんのちょっとのテイストの変わり方でほんと自由自在。
アリガタイ。
寝相が謎なのお気に入り。
2人のべたべたの仕方が現実感あるよなーと思っていた。
住んでるマンションがオシャレ。でもいくら元社長とはいえ、小規模マンションとはいえ、
家族でバラバラに住んで家賃も入ってこないのはタイヘンなのでは?と思ってた。
ネルラのおうちはさすが美術家の家で、インテリアが良かったねえ。
デスク周りは雰囲気が違って、そこはかとなく宮沢賢治的世界を感じていた。
あと鋳鉄?っぽい壁飾りがいいなと思った。ちょっと欲しかった。
しかしうちには飾るところはないが。
サスペンスとしても(甘く見て)まあまあ良かった。
きびしくいえば岡部たかしが出頭するまでが良かった。
岡部たかしが出頭した時点で、誰かをかばってるのは確定しちゃうし、
それはネルラかレオかどちらかしかないから。
それをいえば、「俺がやった」という台詞を思い出すところでは、
ネルラに言ったという流れになるのは無理があると思った。
自然にレオだと思ったよ。もっとネルラと勘違いするように話を作ってくれないと。
あとはまあ……大目に見るけど、都合よく凶器を見つけるのがね。
そんな15年前の燭台が見つかるかー!!と言いたいが、……これはカンベンしてあげよう。
ミステリじゃないからね。
あとねー。もっと細かいことをいえば、贋作の方を画商に高く買われてしまった時の
婚約者のショックを描いたら相当説得力が違ったと思うよ。単に台詞で流すよりも。
ここは完全にやらかしたなーと思った。ほんと、1、2分のシーンで良かったのに。
阿部サダヲは大好き。でもこのペアの作品を見るのは初かもなあ。
……と思ったら「ジヌよさらば かむろば村へ」を映画館で見てました。
阿部サダヲが出ていたことすら覚えてなかった。覚えているのは松田龍平と、
初二階堂ふみだったという記憶です。印象強かったんだろう。
松たか子が好きか嫌いか微妙なところで。上手いとは思うのよ。
でも上手いということを除けば多分好きじゃないんだろうなあ。
Wikiで出演作を見てみても、「蔵」と「あかるいほうへ あかるいほうへ」と
ついこないだ見た「坂の上の雲」……これだけかな。
あ、真田広之がハムレットをやった時のオフィーリアをテレビ中継で見たけど、
あれは良かったですね。「蔵」も素晴らしかった。
――見れば良い役者だが、積極的に見る気にならない。
が、久々に見た松たか子は、変な人を変に演じられる、やはり上手い役者でした。
こういってはなんだが、おお、ほうれい線も目立つようになっちゃって……とも思ったが、
この人48歳でしたか!もっと下だと思ってた。
まあ顔立ちもほっぺたふっくりしているし、ほうれい線が出やすいのかも。
下手にごまかしてないのが潔い。
段田安則もこの年齢感で演じるようになりましたか……。
出来事のわりには精神的に穏やかすぎてリアルさはあまりないわけだが、
このくらい余裕のある人は素敵に見える。現実にはありえないけど。
不倫と知らない不倫はむしろ相手に慰謝料を請求できる事案ですよね?
弁護士である阿部サダヲが「もうこうなっては仕方ありません。慰謝料をどのくらい
引き下げられるか……」と何の事情も聴く前から言ってて、オイオイ弁護士さん。と思った。
ここらはもう少しちゃんと法律に寄せてくれないと。
まあ阿部サダヲがちゃんと出来る人としてキャラ付けされてるのは嬉しかった。
刑事に対してはちゃんと反撃してたもんね。
わりと防戦一方になりがちな役柄だと思ったから、弁護士っぽく反撃してたのがかっこいい。
刑事は……もっと上手く使えたらサスペンスフルになったと思うが、
わりと簡単に味方になっちゃうのね。でも9話で終わらせるならあまり風呂敷広げてもね。
野間口徹が久々にがっつり悪役~~~~(喜)。
阿部サダヲの法律事務所もけっこういい雰囲気だった。
イケメンじゃない方の弁護士の味が良かったなあ。設定も味わいがあった。
雇用主と被雇用者。弁護士としての先輩と後輩。そして友達。
公私の切り替えを上手に描いていて良かった。
離婚しろ離婚しろってデリカシーなかったけど。
この人、たまに見かけるね。名前は小松和重というらしい。
イケメンの方の弁護士は、終盤いい感じに落とされててコミカルで良かった。
堀内敬子はとても好きで、今回も見られて嬉しかったが、
テレビ業界のプロデューサーって感じではなかったんじゃないですかね……
もっとチャラい雰囲気の人はたくさんいただろうと思う。いい役だったけどね。
何とかリヒトさんもいい感じだった。単なる今どきのイケメンじゃなかった。
20年前なら山田涼介がやってた役だったろうな。
小雪もいい軽さ。全然深掘られないキャラクター。でもそれがいい。
最後、ハサミを刺して終わるんじゃないかと思ってハラハラしたー。
あんな風に映すんだもの。メデタシメデタシで良かった。
面白いドラマでした。
……ただし大石静は1勝3敗。

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