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◇ クラフトエヴィング商会「テーブルの上のファーブル」

何でもアリ的に色々詰め込んだ本。楽しいことは楽しいが……
多少苦し紛れの感も否めないかな?

わたしが好きじゃないのは、前半顕著に現れるメタ(ノン?)フィクションの手法。
……って、これ、この言い方で合ってるだろうか。いや、メタフィクションが何なのか、
実はよくわかってなかったりするけれども。
こういうのって、単に楽屋オチみたいに感じて嫌いだ。せっかく文章を読むのなら、
現実とは別な処へ連れて行って欲しいと思っているのに、文中で、

>え?これもう始まってるんですか?

なんて言われると、書き手と自分の現実の中での位置関係を意識させられてしまう。
作り事だったら、舞台裏を見せるなっちゅーねん。表舞台で上手に演じてこその
創作物でしょう、と思うぞ。

まあもっとも、この書き手のキラメキは嫌いになれないんだけれども。
今回ネタが細切れなだけに、ちょっと練りこまれてないような気がして少々残念だが、
この人たちが作り出す世界はかなり好みだ。発想と表現がキラメく。
さらに彼らには工作という武器もあるから、本の構成の自由度はかなり高い。
あまりいませんからね。普通は、せいぜい絵か写真+文章どまりであるところ、
彼らはそこに立体を持ち込む。さらにはデザインで勝負が出来るのも強みだ。

ただねえ、文句を言えば、今回活字小さすぎ。
とりわけ、灰色の紙を使った部分は、目に悪そーな感じだったなー。
その辺りはもう少し気を配って欲しかった。読みにくかった。

感想はあっさりしたものだが、本当に書きたいことは別にある。
クラフト・エビング。先日読んだ澁澤龍彦の本でこの人名に突き当たって、「げ。」と思った。
「サディズム」という語を生み出した、精神医学者であるらしい。「性的精神病理」という著作あり。
……これってやっぱりちなんでるんだろうなー。どこでどうつながるのか、いまいちよくわからないが、
全く無関係につけられた名前だとも思いにくい。
クラフトエヴィング商会の本は基本的に愛らしい。でも可愛いだけじゃない感じですもんね、実は。

……しかし。そぐわないなあ。気分は微妙。

テーブルの上のファーブル
クラフト・エヴィング商會 坂本 真典
筑摩書房
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