多分「影に歌えば」を読んだんだよね。で、「闇の公子」を読んでいるってことは、
「影に歌えば」が少なくともそこそこは面白かったんだろう。全然覚えてないけど。
いや「冬物語」だったか?あ、これは少し覚えてるな、中編二作が1冊だったよね。
面白かった気がする。
本作はものすごく絢爛豪華。主人公は闇の世界を支配する妖魔の公子。
魔術を使ってできないことはなく、しかも良心や劣等感もないので、史上最強ですわ。
愛していた少年が自らに背いた時も、あっさりと行かせ、しかしその復讐はねっちりと。
少年を死に追いやってしまう。もちろんそのことは公子にとっては単に
過去にペットだった存在の面白い死に方でしかない。心に影を落とすことはない。
妖魔が下手に人間味あるよりはいいんじゃないだろうか、人でなしでも。人でないんだから。
公子は思い切り美形で、……ありがちだが、この設定でカッコよさにリアリティを入れても
仕方ないからなあ。
とにかく文体が豪華絢爛なのよね。
好みぴったりというにはわずかに粘度が高いが、許容範囲。
「気になるところがあるけどまあまあ好き」という感じ。
特にありがたかったのは、連作短編というか、一篇が長めのショートショートくらいなので、
この絢爛たる文体・こってりしたファンタジーが胃もたれしないということ。
ちょこちょこ読んで吉。ただ前の話は忘れるが。
多分シリーズものなので、飽きるまでは以降の作品も読んでみる。
本作の翻訳者の浅羽莢子さんは「セーラ・ケリングシリーズ」で大変お世話になった。
ドロシー・セイヤーズでもちょっとお世話になった。
2006年に53歳で逝去。若かったね。――ご冥福をお祈りします。
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