初連城三紀彦。
ん-ん-ん-。
ネタバレをするので、今後、連城三紀彦作品を読むかもしれない人は、
わたしの轍を踏まないように、以下の文章は読まないでください。
ネ
タ
バ
レ
だ
よ。
この作品を、わたしは「最後の最後のどんでん返しが!」というような文章を見て、
どんなどんでん返しなんだろうと興味を持って読んでみたんですよね。
――だが、よく考えてみれば、「どんでん返しがある」と知って読んでいては、
そのどんでん返しを楽しむことは出来ないのだ!!盲点でした。
なので、どんでん返しについては全然知らない状態で読むのが正解です。
(余談だが、「もうてん」を変換すると最初に「蒙恬」が出て驚いた。)
実は連城三紀彦って、わたしがあんまり好きなタイプのスタイルじゃないんじゃないかと
思いながら読み始めたんですよね。
実際、全体的なスタイルはあんまり好きではない気がする。
でも上巻については、意外にもすごくテンポが良く、謎の出し方が非常に上手で、
これは面白いなと思った。好きにはなれないかもしれないけど面白いと。
一気に読んだ。
だが、文庫本で下巻に移ったとたんに恐れていたことが起こってしまった。
……悪く言えば2時間サスペンス的な雰囲気になって来たんですよね。
じめっとしてて、無理があって、ありきたりなの。
上巻は謎や伏線をポンポンと出してて、それだけで楽しめた。
だが下巻は、半分くらいまではある登場人物とある登場人物の関わりだけを述べるので、
しかもそれがお定まりの「ファム・ファタルにのめりこんでいく若者」という話だから、
読んでて退屈だった。
いろいろ無理があるんだよなあ。
まず出会いがさー。わざと交通事故を仕掛けて知り合いになるんだよ。
しかも若者のみならず、我が子が乗った車に当て逃げするの。
厳密には女の車の方がひかれた形になるんだけど、そんな上手く小さい事故で済むわけあるか!
いや、小さい事故で済む可能性もあるけど、まかり間違ったら大きな事故になる。
女が自分の運転にどれだけ自信があったとしても、相手の反応もあるし、
ちょっとの違いが大きな違いになるし、
――要は、単なる出会いにそこまで大きなリスクを取る理由がないのだ!
面倒なのでいちいち言及しないけれども、とにかくいちいち大なり小なり無理がある。
ここまで状況をドラマティックにする必要はない。というか、ここまでいじると
嘘くさくなる。その嘘くささが受けいれられない。
だってここまでアレコレ出来るのなら、女は超巨大な犯罪組織の長ですよ。
この作者はいろんなところをドラマティックにするのが好きなんだろうなあ。
だがそれが無理を生む。この無理が平気な人は平気だろうけど、わたしは無理。
多分これはこの人の全作品的な傾向だろうと思う。
そして、登場人物の誰をも好きになれないフィクションも好みじゃないのよね。
キャラクターはあんまり魅力的じゃない。共感出来る人物がいない。
上巻くらいのテンポの良さなら、キャラクターが好きじゃなくても面白いが、
下巻になるとじめじめ感が辛くなる。
そして最後のどんでん返しは、たしかに……知らずに読んでいたら、やられた!と
思ったかもしれないが、待ち構えているとちょっと中粒に感じた。
そうねえ、話の骨格はすごく考えられてていいんだけれど、そこに肉付けしていく過程で
不満を持つなあ。無理が。やはり無理が気になる。
あと「戻り川心中」を読んでみるが……代表作の一つだろうし。
でもタイトル的にこれもじめっと系ですかね。たくさん書いた人だし、好きなら
たくさん読むのにやぶさかではないが、現時点ではこの2冊になりそう。
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