3.建物の中の散歩。
面白くないけれども。……でも歩いているうちに、段々面白くなって来る。
曲線で構成される建物は、直線で出来ている建物よりも全体像が予想しにくく、そこはかとなく迷路化する。
この曲がった壁に沿って歩いていくと、一体何があるのか?
いや、どうせそんなに大した物はないとわかっている。せいぜい椅子が二、三脚、あるいはベンチがある程度だ。
しかし。ここで、ファンキーな椅子やベンチのデザインが生きてくる。
「先に何があるだろう?」と無意識のうちに微かに期待しながら、結局見えて来るのが
ごく普通のインテリアだったら興ざめだが、ちょっと変わった形の、見慣れぬ色と形をした椅子、
あるいはベンチだったりすると、目はそれに惹きつけられる。
面白がって見つめる。そういう物を見ながら歩くのは楽しい。まさに散歩感覚だ。
7階から、6階、5階と下がって来るにしたがって、「こじゃれたデザイン」に対する反発は
段々収まってくる。なんといっても、歩いて楽しいから。ほとんど人が行かないだろう、
隅の隅に置かれた(ファンキーな)ゴミ箱を見つけた時は、まるで宝探しで宝を見つけたような気分になった。
(中4階と)3階は、さっきも来た図書館部分。先刻は狭さに憤ったけど、今回は椅子のデザインにも目が行く。
ちょっと面白いよな。色が真っ赤なのは気に入らないけど。でも布はビロードだ。こんなデザインで
ビロード使いなんて珍しい。
2階。ここは1階ほどではないけれど、ずいぶんパラっとした感じの空間だ。ここの椅子も面白い。
色は黒だが、形がヘン。ヘンだけれども面白い。あれ、座り心地はどうなんだろうなあ?
結局、全部見終わって、さて帰ろうかということになった時、わたしは何となく癪に障りながらも、
「意外に気に入った」と言うしかなくなっていた。
何が気に入ったかと言えば、建物の回遊性。いや、回遊とは言えない。大変残念なことながら、
エスカレーターは3階の図書館までしか通じていず、それより上はエレベーターを利用するしかない。
これがエレベーターを使って、回遊できるようになればもっと良かったのだが……
目を楽しませながら歩かせてくれる建物。ごく普通に歩くだけで散歩気分を味わわせてくれる建物。
せんだいメディアテークはそういう建物だった。単にこじゃれた、というだけではない。
わたしは、せんだいメディアテークと伊東豊雄を認めた。
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