読み始めてから、書きぶりと出版社から自費出版かな……と思ってハードルを下げたが、
それでも内容はなかなか良くて満足。面白かった。
著者はたしか校長先生とかの経験者だったかな。
わたしは20年以上前に平泉関連の書籍をけっこう漁った。
この頃の記憶は八割方消えているが、でも大どころはだいたい押さえている(いた)という
気はしている。
この本では稗史・説話集に潜んでいる平泉関連の話を拾ってくれていて、
小さい話が読めて面白かった。
話自体はちょこちょこ読んだものもあったが、さらにあちこちの言い伝えなども含まれていて、
これは史実とは違う部分の、庶民感情を表したものとして貴重。
義経の関連としての平泉も多いが、独立した平泉はさらに面白い。
後半の3分の1くらいだろうか、話が芭蕉に移ってからの話は深くて面白い。
この辺が一番得意な人なのかな。
……本をもう返してしまったし、読んでから一週間ほど経っているので、
細かい内容は忘れてしまったが、兼房について深く触れているのが独自性。
兼房は「卯の花に兼房みゆる白毛かな」の人。義経の奥さんの久我大臣の姫の守り役……
と言われるようだが、そもそも久我大臣の姫というのが架空で、この人も架空。
それを言ったら弁慶も架空らしいが。
まあでも義経と熊野水軍との繋がりはどこかであって欲しいと思うのよねー。
おやおや。「兼房みゆる」は曽良の作だったですか。
けっこう詩情があって好きな句だが。
わたしは平泉好きだが、なぜ好きになったかというと、それは「おくのほそ道」からといって
過言ではない。
とある夕暮れ――高館にのぼって、目の前に束稲山を見晴るかし、北上川の流れを見、
そして傍らにある石碑に彫り付けてある「平泉の段」を読んで、その美しさに震えた。
他に誰もいないところで、声に出してその文を読み上げた。
そこからの平泉LOVER。
そういうこともあって、この本の内容は共感できるものだった。
面白く読ませてもらった。
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