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◇ クロフツ「クロイドン発12時30分」(半分以降パラ読み)

「樽」のクロフツ。「樽」を12年前に読んだあと、「樽」以外は面白いのか?と思い、
今回読んでみた。

……いやー、よく書けてる作品だとは思うんだけどねー。
なにしろこの話、犯人(=主人公)の内心をじっくり書いていくタイプの作品で。
決して悪人ではない犯人が、どういう過程ののちに殺人を犯していくのか。
ほんとに丁寧に書くから、……主人公に同化して読むタイプのわたしにはツライ。

ツライというか、心が痛いというか、いたたまれない。
半分までは、辛かったけどなんとか読んだ。しかしその辺りから
ばれずに済んだと安堵している主人公が次第に追い詰められていく展開で、
もう我慢できなかった。あとは解決篇まで飛ばしました。
どうせ名探偵が結局解決するんでしょ?

全体的には緻密でしっかりした作りの作品なのだが、若干淡々としすぎているきらいが……
とりわけ解決篇は完全に予定調和で(まあ仕方ないんだけど)、
名探偵フレンチ主席警部は食事会で自らの推理を披露し、全員が彼をほめそやすという。
褒めてもいいけど、褒め続けることは不要だったのではないかと思う。褒めすぎ。

殺される人も、良くは描かれていないのよね。
不況で会社経営に苦しむ主人公(甥)に「お前の努力が足りないのだ!」と言い放つ前経営者。
たしかに主人公は多少甘いかもしれないけど、そんな言い方しなくったって……
少しは知恵を貸すとか励ますとか、やってくれてもいいだろうと。

クロフツなあ。緻密な作家なのはいいけれど、こう書かれるとわたしにはツライかなあ。
もう少しユーモラスなものが好きかもしれない。もう1、2冊読むが、どうだろう。

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