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◆ 建築としての宮城県図書館。(その5)

4.細々とした疑問。(その2)

<何故暗い?>

エントランスホールと、生涯学習室以外には、光を取り込む工夫はなされていない。
むしろ光を締め出す方向で作られている。
これは一長一短あれども……わたしはどうかと思うよ。

たしかに燦燦とふりそそぐ太陽光は、本には良くはないんだ。あっという間に焼けるからねー。
閲覧席がずらりと南の壁に沿って設定されているから、全面ガラス張りにでもしたら、
眩しくて勉強どころじゃないだろう。でもそこまで極端にしろと言っているわけではなく。
もう少し外光を取り込んでも良かったんじゃないかなー、という話。

3階の窓は小さい。イメージは飛行機の窓。実際は飛行機の窓の4倍くらいか。
壁面の大きさを考えれば、極小である。
室内の明るさは、主に照明に頼っている。そのせいで、エレベーターが3階に着くと、
扉が開いた瞬間、暗いんです。少なくとも爽やかな気分には間違いなくならない暗さ。

たしかに、静けさを誘うにはいい暗さと言えるかもしれない……ので、一概に否定するのもどうかと思うけど。
でも、窓をもう少し広く取っても罰は当たらなかったんじゃないだろうか。
そうすれば電気代も少しは助かっただろうし。
窓が小さい理由が、単に「宇宙船をイメージさせたかったから」だったりしたら怒りますよ。

天井をさ。透過光が利用できるように作れなかったもんかね。
音を反響するに役立っているだけで、目を楽しませるわけでもない、あの吹き抜けの、ただっぴろい天井。
これを、柔らかな光が落ちてくるようにデザインしたら……すごく素敵になったと思うんだけどなー。
イメージは障子の白さ。温かみがあって、明るくなって。良かったんじゃないかなあ。

<調査相談カウンター>

ささいなことなんだけど、調査相談カウンターの客側には、脚を入れるスペースが作られていない。
この辺り、設計者が図書館のことをまるっきり知らないというのが如実に現れてるよなー。
調査相談カウンター自体がかなり大きな作りだから、客がきちんと椅子に座ったら、
司書の人と客は、2メートルまでは言わないけれど、1.2~1.5メートルは離れることになると思う。
反響のせいで、あれだけ音が気になる場所で、1.2メートルの距離で会話するのは相当なストレスですよ。
カウンターに置かれた本を調べるにも、何しろ太腿分の空間がカウンターとの間にあるわけだから、
ものすごく前のめりにならないと読めない。やれやれ。

わたしはついつい夢中になって、椅子に横座りで話をするが、はっきり言ってみっともない。
設計者が利用者のことを少しでも考えたなら、こんな作りではいけないはずだ。

<トイレ>

1階の女子トイレと男子トイレの空間は上の方で繋がっているので、隣の音がよく響く。うへー。
っていうか、トイレの音をあんなに響かせてどうするの……

<屋外地下広場>

これをどう考えるべきか、レストランで食事をするたびに思う。
レストランから屋外地下広場はよく見える。眼下に広がる開放的な空間。
御影石(?)で作られた段々は、まるで古代円形劇場のようで(間違いなく基本コンセプトは同じ)、
なかなか素敵だ。見てくれはいい。しかし、見てくれでこんなに場所をとっていいものだろうか。

これが、例えば街中にあるのなら。
すごく有効な空間になると思う。通行人がちょっと立ち寄って座って休む。
天気のいい日は、学生や勤め人が御飯なんかも食べるだろう。
音響は計算されていないが、作り的にはミニ・コンサートにぴったりだ。
まさにイタリアにおける、ピアッツァ的役割を立派に果たすだろう。

でも。あんな辺境にあっては。
そもそも通行人がいないのだ!あそこに来るのは、図書館利用という明確な目的を持った人たちだけ。
そりゃ彼らも脇目もふらず本に突進するわけじゃないけど、そもそも図書館という
ある意味で息抜きの空間に来るのに、古代円形劇場で憩う必要性は低いのだ。

これも、事務方に訊いてみた。どんな使い方をしているのかと。
そうしたら、図書館としては、あの場所を積極的にどうこうしようという意志はないらしい。
開放して、憩いのスペースになればそれでいいと。
パンフレットには「谷川俊太郎さんの詩をきく会」が行われた時の写真が載っているから、
何かが行われたことがあるのは確かだが、それも特に図書館側で主催したわけではないそうだ。
まあね、図書館と音というのはある意味対立するものですからね。
それであんまり積極的に音を追及されても困るものがあるが……

時々は幼稚園児が散歩の途中、雨宿りに使ったりするらしい。
いや、せめてこういう風に役に立っているのを知って、わたしは嬉しかった。
少なくとも活きた使い道ではあるじゃないですか。だが……頻度を考えるとなあ。
お弁当を食べている小学生の二人組、立ち話をしているお母さん、
何度か見たことはあるが、……ほんとに何度か、だもんなあ。それ以外はただっぴろい空間が、
人っ子一人いない状態で広がっているだけ。眺望の良さには貢献しているけど。
この空間、もっと有効に使えたのではないか。

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