うーん。近過去中国風俗は面白かったけど、正直飽きたなー。
長かったしね。単行本で500P弱だったから。
現代中国作家を読んだのは……なんか一人くらいいた気がするけど、
その名前はまったく出てこない。初めてである可能性もある。
なので比較してどうとかいうことは全く出来ないのだが、講談の系譜かなーと感じた。
西遊記と比べるのは違うのかもしれないが、1つのエピソードをほどよきところでまとめて、
次につなげる呼吸は近い気がする。群像劇であるところも。ドタバタ悲喜劇なところも。
……だがその群像があんまり魅力的じゃなくてなあ。
一応主人公は宋という人物で、店を持たない骨董商。彼の偏愛の「乾隆帝の幻玉」を
めぐってぐちゃぐちゃいろんなことが起こる、という話なんだけど。
とにかく登場人物のほとんどがこすっからくてヤな奴ばっかりなのよ。
骨董商が何人か、水運びとか人力車引きとか、外国人もちょろっと出て来て、
うーん、主要といえるのは10人ちょっとくらいでしょうかねえ。
このうちすっきりいい人がたった1人で(奥さんも含めれば2人)、しかもその人は
例によって理不尽に死んでしまうのよ。
例によってというのは、他にもぽろぽろ人が死ぬから。
死ぬことの簡単さに前時代的な雰囲気を感じますね。それこそ講談。
ちょっと現代小説の味わいとは違う。
あ、小説の舞台は中華民国成立後の北京。袁世凱がもう死んでいる頃だったかな。
現実、日本では昭和初期頃だと思うけど、時代感覚的には明治後半くらいのイメージ。
時代が変わって、王朝が倒れて、西洋人が来て……というような。
蘊蓄小説の趣もあるかなー。蘊蓄小説ってジャンルですよね。
蘊蓄の対象は当然骨董。あと中国武道についてもわりと詳しく書いてたし、
歴史的民家についても書き込んでたし、そういう風俗的な部分は楽しめた。
骨董商たちの習性も、北京油子(北京っ子の性質と言われる、ずる賢く立ち回る様)
であることで説明されるしね。
だが最初から最後まで、こすっからい人たちが右往左往する話だから、
全然爽やかじゃないんだよ。読んでて楽しくない。
しかも主人公であるはずの宋も半分過ぎくらいで、なんだかいなくなっちゃうんだよ。
なぜいなくなるのか。他の人の方が、書くのが楽しくなっちゃったからなんだろうな。
でも主人公がぱったり姿を消して、戻ってくるのは終盤になってちょこっと、
だとどうもバランスが悪い気がする。
あとがきを読むと、古き良き、現代では消えつつある骨董の世界を残したいという
真面目な思いで書いた作品らしいんだけどね。
それにしてはドタバタしすぎな感触。まあ好き好きだけど。
近過去の中国の骨董界の話を読みたい人にはいいと思う。
それ以外はそんなに……かな。
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