万城目学は8年ぶり。8年前にそれまでの作品をほぼ全部ツブし、課題図書の最後に回した。
今回久々の再開。
でもこの8年で、そこまで作品数は増えてなかったですね。5作品。
まあ5つも書けば順調でしょう、本作もけっこうみっちりとした作品ですし。
みんなが恩田陸ほど書くわけではないのだ。
とはいえ。この作品の感想は……うーん、いまいちかなあ。
面白くなくはない。でも終盤飽きますよね。全体の4分の3まではほぼ面白く読んだけど、
こんがらがった話が後半解きほぐされて明確になっていくのかと思いきや、
むしろ混迷の度を深める。なので読み終わってもスカッとしない。
昨今の小説は設定を語ることに淫している作品が多いと思う。
――偏見だが、特にラノベ系はほとんどがそうではないか。
設定を延々と語ることが「物語」ではないのだが、そこを勘違いしている。
万城目学はその他の部分も書いているから、そこまで難にはならないけど、
やっぱり終盤の混迷は設定淫者のゆえかと思うなあ。
もう少し「物語」として成立させて欲しい気がする。説明が多すぎる。
まあわたしはシンプルなストーリーが好きなタイプだから、余計にそう思うんだろうけど。
カラスの化身の女は魅力的ではある。この人が敵か味方かわからないのというのは
いいとして、お祖父さんがなんで最終的に否定的な存在として立ちはだかるのか。
まあお祖父さんだから問答無用で善人というわけではないけれども、
この話の流れで、お祖父さんの怪物性が増していくのは違和感があるんだよなあ。
あとわたしが呑み込みがたかったのは、少女が伯母さんというところね。
むしろお母さんならまだわかりやすかった。母と祖父との葛藤なら、
まだ納得しやすかった気がする。
でも伯母さんという一つ置いた関係性であることで、なんかすっきり収まらないんだよなあ。
お母さんも伯母さんも出てくるのに、少女は伯母さんでしょ?
お母さんと伯母さんのキャラクターがそこまで書き込まれているわけではないのに
なんで伯母さんがより重要な存在として出てくるのか。
お母さんが出てこないなら百歩譲って違和感はなかったかもしれないけど。
一応「自伝的小説」という話らしいから、実際の関係性から書いた部分も
多いのかもしれないが、こういう空想的な、つまり観念的な筋の話で実際の関係性に
こだわられても読みにくくなると思うんだよね。
まあこのあたりは作者の自由を認めるべきかもしれないが。
すらりと読めればこんな不満は持たないけれども、結局すらりと読めなかった不満が
いろいろ考えさせるんだよね。
部分的には魅力的な想像力も多々あるのだが。
部分的にとどまっているのが惜しいところ。わたしにとって万城目学はだいたいにおいて
そういう存在で、ある程度面白いんだけど手放しで称賛は出来ない書き手。
でも、誰にでもわかりやすい話を書いて面白い作家ではないだろうしね。
まあ変さは失わないで欲しいよ。だがもうちょこっとでいいから、話を整理してほしい。
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