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◇ 吉田修一「横道世之介 続」

あの「横道世之介」の続編です。

いや、達者な人だねえ。吉田修一。
ほんのりと侘しくて、ほんのりとしょっぱく、ほんのちょっと美しく、
そして大部分はユーモラス。
人生だね、いわば。人生を書く作家。

相変わらず三歩進んで二歩下がる人生ですよ、世之介は。
でもなんとなく幸せで、周りもなんとなく幸せにして、悪い人生じゃないな。
こういう人生に――憧れる人は少ないだろうけど悪い人生じゃない。

話としては、張り巡らされた関係性がストーリーを邪魔しない程度に上手に回収されて
これも上手いなあと感じる。関係性を張り巡らして、それを回収するだけで
ストーリーになっていない話もありますからね。

ただ、視点人物がころころ変わるので、段落の冒頭、一瞬「誰が喋ってるんだ、これ?」
となることは多々ある。狙ってやってる部分はあるだろうし、
この人の上手さなら決定的な瑕疵にはならんけど、
直せるもんなら直した方がいいかな。

ちらちらと写真家の話を出して来て、これは次の「永遠と横道世之介」で
がっつり「横道世之介」を書いていくんだろうね?
実は前作にしても本作にしても、世之介を書いてないわけではないが
まだ大部分を隠している気配がある。主人公は世之介だとタイトルからして
思わせてるのに、実は仕掛けがありそうなんだよね。

その仕掛けを、次でどう料理してくれるのか。楽しみである。

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