門前典之は3冊目。1冊目の「屍の命題」、2冊目の「建築屍材」とも
起承は実に本格っぽくなりそうな面白さで、そして転というほどの転はなく、
結がダメダメ、という共通項を持っていた。
さて3冊目はどうか。
……この、いかにも大げさな、いかにも本格っぽい風呂敷の広げっぷりは
すごくいいんだけどなあ。わくわくする。大名作になってもおかしくない期待感を持たせる。
が、相変わらず転と結がダメダメだなあ。
これだけ明確な欠点なら、むしろ矯正は容易なんじゃないかと思うんだが。
ミステリだから、前半がどんなに良くても上手く収束しなければ駄作だよね。
前半の見事な大風呂敷に比べて、謎解きのしょぼさよ。
出版側がなんでこれでいいと思えるのか謎だ。むしろそのことがミステリ。
謎解き自体のしょぼさもさることながら、文章の後半の失速ぶりがヒドイ。
クライマックスであるべき部分から途端に文章に精彩がなくなる。
完全に説明になっているもんね。なんとか終盤になだれこんでるだけで、
話のクライマックスというのがほぼない。
でもわたしはこの大風呂敷の広げ方がとっても気に入っているのよ。
正直この大風呂敷に見合うほどの結末を用意出来るかというと、
たとえけっこうな書き手であったとしても望み薄だが、
大風呂敷のせめて半分くらいまで結末を引き上げられれば、
面白いといえる作品になるんじゃないかなー。
そのわずかな可能性に期待して、4冊目も読んでみざるを得ない。
あ、でも探偵役がほぼいない、ってのは明確に作話法が間違ってるから止めた方がいい。
ただでさえ長い前日譚。300ページの作品のうち、100ぺージが前日譚。
それはまあいいとして、その後から探偵役とワトソン役がようやく登場して、
しかも探偵役は30ページだけでいなくなっちゃうからね!
そして終盤の256ページ目にようやく戻って来るという。
これはねえ、ホームズシリーズみたいに何十作と書いたあとで、
たまには目先を変えようか、という時にワトソン主導で1作作ってみる、とかの
場合にだけ有効な手法で、シリーズものとはいえ2作目で採る方法じゃないんだよ。
前作だって探偵役が描けていたとはいえない。
今作もワトソン役が意味不明にでずっぱり。変な作り。
……という風に欠点は多々あれども4冊目も読みます。
いつかこの人のちゃんとした結末が読めるといいなあ。
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