上手に話を作る柳広司。5、6作順番に読んで来たが、
今のところ不満に思う出来はないですよ。みんな水準以上。スゴイ。
特に今作は漱石のパスティ―シュもやっているから、そういう意味でも楽しめた。
ま、わたしは坊ちゃん派ではなくて猫派ですけれども。
でもいずれにしても夏目漱石は好きだし、かなり近々に「明暗」「續明暗」を読んだし
これも読んだし、けっこう漱石づいてますな。
赤シャツが首をくくった、という話を作る。
しかも坊ちゃんと山嵐が松山を去った直後に。
あれ?でも犯人誰か忘れちゃった。犯人というか、ストーリーを忘れちゃった。
一応最後を読み返すと、……けっこうハチャメチャになって終わりますね。
いつものこの人の、それなりの堅実さのある話とは違う。
筒井康隆的ドタバタシュールを思い出した。まあこれは好き嫌いがあるだろう。
でも坊ちゃんの清への思いが吐露されて終わるから、ほろりとする。
これは原作もそうだったね。坊ちゃんと清の関係性は時々顔を出して泣かせる。
原作よりもさらに清が大切になっていて、この部分読んだだけでも良かった。
漱石のパスティ―シュは何作か読んでいる気がするが、
……かといって何を読んだかは記憶にないけれども、
「鹿男あをによし」?奥泉何とかさんの「吾輩は猫である殺人事件」?
パスティ―シュだと思うと構えて読んでしまうんだよなあ。
これは文体的に満足なパスティ―シュだったけど。
でもラストドタバタシュールだし、あまりパスティ―シュだと思って読まない方がいい。
わたしは柳広司気に入ってるので面白く読んだが、
漱石を読みたい人が読む作品かというと、そうではない気がする。
あまりこだわらない人におすすめ。
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