柳広司はこれで2冊目。前回の「百万のマルコ」も面白かったので期待していた。
そしたらねー。なんとこれも面白かったんですよ!
期待していて期待に応えるほど面白い作品というのはなかなかありません。
この人、歴史を上手く使ってるねー。
いうても前回のマルコ・ポーロはお手軽に使える設定だったけど、
こっちの作品は相当ギリシャを調べないと書けないよ。
古代ギリシャをこういう風にフィクションで使うのは希少かもなあ。
ソクラテスとクリトンが探偵役とワトソン役。
……クリトンはよく知らないわけだが、ソクラテスがそれっぽい。
変に尊大な人にもなっておらず普通にいい人。ちょっと変人だが、それは当然。
「ソクラテスを書く」となったら普通もっと構えちゃいそうだけど、
無理のないキャラクター化。
謎の立て方がかなり魅力的だった。謎解きの部分は立て方と比較して
少し地味だったけれど、その周りのギリシャ世界をちゃんと書いてくれていたので
謎解きの地味さは許されている。謎解きよりもその周辺が魅力的で正義。
「ホムンクルス」は答えとしてはなーんだ、という部分もあるが、
そういうこととは全然想像してなかったから、スコーンと抜けた快感があった。
あとピュタゴラス教団をとても上手く使っていた。
こういう感じだったのかなあと思う。神秘思想。
いや、これはフィクションだから、あまりに信じすぎるのも良くないが。
パウサニウスは「ギリシア旅行記」を書いたパウサニウス?
ちょっと気にかかるのは、パウサニウスを殺してしまったこと。
よく知らないのでそこまでではなかったが、え、死んじゃうの?と思った。
アリストパネスも良かったよね。「喜劇作家」という唯一の手掛かりを
上手く小説に活かしていたと思う。
作者は頭がいい人なんだろう。今後つぶしていこうと思っている。
歴史上の人物をモチーフにして作品を作ることが多いみたい。
そうでない作品がどういうことになるのか、途中で飽きないか少々不安だが。
楽しみですな。
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