ああ。ウィルキー・コリンズって「月長石」の作者か。
昔、読んだ。……読んだよね?内容はまるっきり忘れているけど。
数年前に、それまでの読書記録の半分くらいのデータが飛んでしまったので、
読んで来た本の正確なところがわからない。
「英国最初の探偵小説」「最初にして最良のミステリ」などと惹句があるから、
――というよりも若竹七海がエッセイで、イギリスミステリとして紹介していたから、
ミステリだと思って読み始めた。
が、これから読む人には違う読み方をおすすめしたい。
まずこれはゴシック小説である。そしてゴシック小説を読むと覚悟した上で、
ミステリだと。そういう認識でいて欲しい。
そうすればかなり楽しめると思う。最初から「ミステリでしょ?探偵小説でしょ?」
と期待すると、話の冗長具合に根を上げたくなるから。
上下巻で読んだが、上巻の3分の1くらいは退屈だった。
しかしゴシック小説と最初に覚悟すると、その現代的なエンタメ性に驚くことになる。
まさに現代の本格推理小説の萌芽がくっきりと見られるじゃないですか。
けっこう伏線張ってますよ。辻褄合わせてますよ。
具体的にどこがとは忘れてしまったが。
語り手が次々変わっていくリレー方式。
かなり多人数で語っていくんだけど、たった一度だけ語る……えーと、誰だっけ?
名前を忘れてしまったけど、自称病弱のローラのおじさんのパートが相当に笑える。
どういう風に笑えるかは読んでいただくしかない。
こんな笑いは、小説を読んではめったにないかな。
ユーモア小説なのか?と思ったくらいだった。
マリアンが男前で、しかし彼女個人として報われることは少ないね……。
登場シーンがあまりにも……ヒドイというかかわいそう。
決して悪人ではない(というか主人公で善人)ハートライトが、初対面で
姿は美しいが顔がものすごく醜いと描写している。
ものすごく醜い顔ってどんなん……。
そこまでハンデを負わせないとだめだった?
まあローラよりマリアンが完全に魅力的だから、
ヒロインをローラにするために必要な措置だったのかもしれないが。
二度は読まないけど、一度は読んでもいいと思う。長いけどね。
黎明期のミステリ。ホームズに先立つこと約30年。モルグ街の20年後。
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