前半はこれ面白くないかもなあと思いながら読んでいた。
あえて点数でいえば65点くらい。70点から上が読んでまあまあ良かった本、
という範疇になるので、ぎりぎり達しないくらい。
後半、若干サスペンス風味がついてからは少し面白くなった。
75点くらい。後半挽回する作品は珍しい。
が、最後まで読んでハテ?と思った。
エピローグが納得出来ないなあ。一応最後に主人公である速水の背景を説明して、
それが「騙し」らしいんだけど(退職してからの動きも含めて)、
え、これが騙し……?と納得出来ない。
そもそも小説の作りが疑問。
この作品、プロローグとエピローグが同期の小山内から見た速水を描き、
その他は速水が視点人物で展開するのね。だいたい9割強が速水。
そうするとねー。
プロローグとエピローグでは油断も隙もない出来る男として描かれてる速水が、
9割で苦労し詰めのサラリーマン(中間管理職)であり、
小説に対する熱い情熱と、周りの人への気遣いをする単にいい奴なので、
整合性が……とれない、とまでは言わんが、
なんていうか若干どう見りゃいいの、感があるのよ。
小山内の視点はいらなかったんじゃないかなあ。
あんまり効果的に決まっていた気がしない。
さらに小山内がエピローグで速水の正体を語るんだけど、なんか無理を感じてね。
別にシンプルに、速水が視点人物で始まって終わって良かったんだけど。
要素が多すぎるよなあとも思った。
雑誌と小説への情熱。
それに反する会社の内部抗争。
メインのこれだけで良かったと思うんだけど、他の、不倫だの家庭だの、
自分の背景だの継父だの……ってむしろ煩雑になるだけで、効果的か?と思う。
作者は速水の背景こそ書きたかったのかもしれないけど、純粋に会社の中で
生きるのが難しいってところだけで良かったんじゃないかなあ。
まあ作者は書きたいことしか書けないものだけど。
ああ、映画を先に見ているので、そのイメージが邪魔したということはあるかな。
「いや、映画と全然違うやん」という思いが純粋な読みを邪魔した。
映画の方がすっきりしていて好きだったかも。
大泉洋への当て書きは面白かった。いろいろな場面を大泉洋で想像していた。
掛け合いのところなんかは特にその仕掛けが利いたな。
エピローグを読み終わって、結局ぎりぎり70点くらいかなあ。
全体的にちょっと薄い気がすることは否めない。どこが、といえないんだけどね。
映像化を目指して書いていることが透けて見えるところか。
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