わたしはこの人、創作家としては小さいかなーと思っている。
一般的には、面白い小説というものは幅も奥行きも見えない大きな作品世界を
その背後に感じさせる気がしているのだが、この人の作品世界はサイズが
わかりやすい気がしている。
が、そのわりには今まで十数冊読み続けている。自分でも不思議。
ネタが分かった上で楽しんでいるマジックのようだ。
今回の主題は歌舞伎。カブキか。
デフォルメされた歌舞伎の世界(そうデフォルメされたものでもないかもしれないと
考えるとコワイが)で、極彩色に展開する冒険もの。
後半は「千と千尋の神隠し」を思い出していた。
この人の普段の作風は、世界設定をひたすらつめこむもんだと思っている。
極端にいえば、設定を書くだけの小説。
これは昨今のライトノベル、アニメと通底している。
が、ラノベ、アニメが単に設定の垂れ流しと感じることが多いのに対し、
この人の場合はその密度が比べ物にならないほど高いので、立派に作品である。
が、今回は若干普通の小説に寄ろうとしているように見えた。
それが不安定に見えていた。腰が定まっていないというか。
まあ別なスタイルを試してみるのもいいと思う。
半ばすぎからようやく本来のハチャメチャな味わいが出て来たかなー。
やっぱりこの人は、世界を小さく四角く囲って、その中を思いのままに
荒らす――荒らすと言っちゃいけないな、創造するのが似合っている。
最後は、普通の小説として始めた帳尻合わせをしなきゃいけなくて
苦労したのではないかなーと感じる。
でもきっちりとした小説はこの人の作風じゃないですからね。
誰もが納得出来るきれいな小説の終わり方ではないが、
(きれいすぎるほど普通な終わり方だというべきか)
これはこれでいいかな。
まあとても褒めたとは思えない感想だが、読んでる間は楽しみました。
小林恭二の作品は7割ほどツブした。そもそも面白いと思っていなければ
ツブしたりはしないんだよね。残りは十数冊。
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