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◇ 愛川晶「化身 アヴァターラ」

先日、この人の「七週間の闇」を読んだ。
だいぶ忘れているし、読んだ直後の感想メモを見るとそこまで感心したわけでも
なさそうなのだが、時間が経つに従って面白かった印象が強くなってきている。
今では今後ツブして行こうかなと思っているくらい。

「化身」はデビュー作のようです。
鮎川哲也賞受賞作。「七週間の闇」に比べるとだいぶ薄味だったが、
デビュー作だしこんなもんでしょう。というより「七週間の闇」は
過剰にコッテリ風味でしたよね。たしか。

本作もインド神話をモチーフにしていて、本人好きなんだろうなあ。インド神話。
でもインド神話である必然性はほとんどない気がする。
わりと登場人物が普通の人だから。インド神話を持ってくることで、
その部分が浮いたと感じた。致命的ではないけれども。

主人公の女の子は概ね好感度が高かった。
が、正直に言って、終盤以降の展開はドタバタしていて納得感は低い。
このミステリの肝は偏に誘拐としては意外な着想である〇〇を持って来たところだが、
それがゆえにピシッと決まるというよりは、いろいろ無理な展開になってしまった。
それでも読んでて腹は立たなかった。実際は相当無理なんだけれども。
デビュー作ということで大目に見ようという意識も働く。

現在に至るまで、けっこうコンスタントに作品を出している。
前半は今のコッテリ系で書いていたようだが、後半は軽めの噺家ものをメインに
書いているようだ。むしろ後半の方が好きな作風かもしれない。
ので、楽しみに読む。

が、軽いといっても「しゃばけシリーズ」のような薄さだとちょっとイヤ。
その恐れは若干あるなー。あまり期待しすぎないように読んでいこう。

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