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◇ 恩田陸「失われた地図」

相変わらず恩田陸は、タイトルが内容を表していない話を書くのであった。
この人の作品はリアルタイムではないが、ここ10年くらいでここまで
ほとんど全部読んできた。
その中でタイトルが内容を表している作品はほとんどないですからね。
ほとんどは大げさか。でも半分あるかないかですね。

そして本作は恩田陸の悪い面が出て、思いついた設定を思いついた部分だけで
売っている。最後の放り出し方は悪い癖ですよ。収束部を考えることをさぼったな。
けっこうさぼりがちだが、本作は特にそれがひどい。

他の作家がこんな終わり方をしたらその後は二度と読まないだろうが、
恩田陸の場合、しょうがないなーと大目に見てしまう。
それはひたすら、サスペンス部の盛り上げ方が巧みだから。

この人の場合、起承転結の承転だけで読ませてしまうんだよなー。
本作だって起はほとんど描かれず――そういう手法は珍しくないが――
あとはひたすらサスペンス。そして結がほとんどない、つまりカットアウト。
だが説明不足だろうと、結末がなかろうと、読んでいる間は
存分に楽しませてくれる。

いいか、それで。という気分になる。
書く腕力の高い人。異常なほどだ。なので、小説としての体裁が整っていなくても
いいとする。まあわたしはちゃんとした小説が読みたいがね。
この作品だって決して好きとはいえないけど、でも中盤を読んでいる時の
サスペンス感はたまらないのだよなあ。

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