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◇ 伊坂幸太郎「ゴールデンスランバー」

全体的にはまあまあ面白かった。

サイドストーリーというか伏線を、まず2つ書くのは上手い。
田中君と少年はその後ほとんど出て来ないから、田中君を視点人物にするのは
若干疑問だけど。でも胡散臭い保土ヶ谷さんのその胡散臭さを出すためには、
誰か他人の目から見た姿を出さなきゃいけないだろう。

ケネディ暗殺をなぞって淡々と書くところは好きだった。
ケネディ暗殺を、舞台を仙台に移して(フィクショナルに)解き明かすのかと
思ったので。しかしそういうわけではなかった。

わたしは伊坂幸太郎を15年以上まえに何冊かまとめて読んで……
あんまり好きじゃなかったんだよね。4,5冊は読んだんだけど。

15年以上経って読んで、淡々とテンポよく書くようになったんだなーと思った。
進化とはいわないけど、この変化は歓迎すべきと思った。こっちの方が好き。

が、第四部(文庫で700ページ近い話の100ページ目)からは
相変わらず伊坂節。うだうだやってるから、やっぱりこれか、とがっかりした。

飲物に睡眠薬を入れて眠らせるのも、車の爆破も、前に別な小説でやってたよね?
自作をすっかりそのままなぞってどないすんねん!
長編でセルフパロディか!と思った。

……だが読み終わってから確認すると、わたしは「ゴールデンスランバー」、
映画は見てたんだね!テレビでだけどね!
全然忘れてた。

映画を見て、そのなかで睡眠薬のシーンがあって、その原作小説を読んで、
「ちぇっ、またか」と思ったんだから、これは作者に対して不当である。
大変申し訳ない、伊坂幸太郎。この部分はゴメンナサイだ。

映画はかなり不条理感が強かったけど、原作はそうでもなかった。
不条理というよりご都合主義ですけれども。

でも一番大事な陰謀の結論は出ないんだけどね。ここは人によっては、
バカにすんな!と思うところだろう。あとキルオと。
なんでキルオがそんなに協力する?そんなに有能?と疑問。
ここは作品の評価を左右する部分だろう。

まあそれはそれとして。

この人の話は、大学の話が多いよね。
わたしが読んだのが大学の話ってだけ?

大学時代のシーンは刺さる。いや、刺さるとまではいわないけど思い出す。
そう。こんな大学時代だったよ。
勉強はしなくて、バイトはけっこうしてて、その他はいっつも部室で駄弁っていた。
だべるというのも死語だろうなー。わたしも「だべる」を使うのは
大学時代のあの頃のことだけだ。
ほんと、だべってた。
いつまでもいつまでも、帰らなければならなくなるまでだらだらと。

それが、なつかしかったりもする。

この話で一番気に入ったところは、
「思い出が暗号になる」というところだな。

思い出はさー。その時にしか作れないんだよね。
後から作り直すことは出来ない。
その時そこにいた人にしか。
それが何より強い、打ち合わせも要らない、合言葉になる。ちょっと泣けるよね。

まあノスタルジーと仙台の街並みを楽しんだ。
ちなみにミステリーとして読むとまったくダメダメなので気をつけて。
サスペンスとしても微妙。なにしろ国家権力がめちゃくちゃすぎて……

 

 

 

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