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< モアナと伝説の海 >

映像はすばらしい。目を奪われる。
なんなら吹替の歌声もなかなか良かった。

……が、話としては今一つノレなかった。
悪くはないが、ディテイルに凝り過ぎたんじゃないかなー。

ハワイ辺りの設定かと思っていましたが、南太平洋らしいですね?
でも神の名前がマウイって……ハワイのマウイ島からとったんじゃないの?
あと、あのテ・カァはどうしてもキラウェア火山を連想させるしね。
ま、いずれにしろ参考地なんだからどこだっていいとはいえ、
なんとなく釈然としない。まあそこは大したひっかりどころではないけど。

しかし釈然としないところは前半部分にいくつかあって……

まず一番大きなところは、
モアナの脱出志向>みんなを救う
に見えてしまうところ。

最初にあまりに「外の世界へ行きたいモアナ」をフィーチャーしてしまったので、
そのあとに出てきた「世界を救うためにマウイを探しに船出するモアナ」が弱い。
自分の欲望にちょうどいい大義名分を得ただけという気がしてしまう。

あそこはただ単に「幸せに暮らしていたんだけれども世界があやうくなって
世界を救いに出て行くモアナ」でいいんじゃないかと思った。

そして、わたしが思うにねー。
あんな海辺で暮らしている、魚を取って暮らしている、そんな民族に
そこまで「中」に執着することはないと思うんだよねー。

だってサンゴ礁の範囲なんて狭いよ?
魚とココナツで生活しているんだったら、いくらなんでもサンゴ礁よりは
外へ漁に行くだろう。

そして海の民はそこまで内に閉じこもるだろうか。
まあ海の民は開放的、というのは先入観というものかもしれないけど、
海の民にとって海は壁ではなく道のはずだがなー。

沖縄の人がサンゴ礁の外へ行っちゃいけないと思うかどうか。
ここはアメリカ内陸部の人の価値観で作っちゃったところじゃないかなあ。

この辺で大きくつまづいてしまったので、ノレなかった。

マウイも神にしてはいい加減でファンキーでちょっと目新しい造型を、
と思ったんだろうけど、あまりにファンキーすぎる気はした。
まあそれはいいけど。

ただ昨今のセクハラ、DVが問題視される世界を見た後の目で見ると、
あんなガタイのいい男が、年端もいかない女の子をぽんぽん放り投げるのって
ちょっと気になる。本人同士は気にしてないだろうが。
船から放り出すってちょっとしたリンチですが。
まあ、ここはわたしの考えすぎですね。

あと、映画として――というかミュージカル映画として弱いところは歌かなー。
ミュージカルだと思って見てなかったから、突然歌いだしてようやく気づいた。

でもやっぱりミュージカルって――メロディが生命線だよね。
見た人がくちずさみたくなる歌が1曲でもあれば、それはミュージカルとして残る。
だが平凡な歌だけで構成された作品はミュージカルとして弱い。
今回は歌が弱い。

吹替のだいぶ不利なところとして、英語で書かれた歌詞を日本語にすると、
メロディにのりにくくなっちゃうんだよね。
意味を伝えて音数を合わせてさらに日本語としても優れた表現というのは
三重苦でしょう。難しい。

この映画はただひたすらに絵を楽しみましょう。

少し色合いが鮮やかすぎて、この部分は好き嫌いがあるだろうが、
ほんとに絵は素晴らしいですね。
近年のディズニーはエキゾティックを多用して成功している。
「アナと雪の女王」しかり「リメンバー・ミー」しかり。
今度の「ムーラン」も同じ系列。

海の表現なんかも良かったねー。
赤んぼのモアナと海との出会いのシーン、すごく好き!
ラッセンの絵を思い出した。

イレズミの使い方が面白かった。
かなりの尺をモアナとマウイの2人だけでまかなうけど、
動くイレズミを入れて3人。ヘイヘイも入れて4人。
ヘイヘイが――あのニワトリです――あんな外見なのにけっこう重要な役柄。

ブタがお留守番なところが話の流れとしてちょっと不満。
しかしブタを連れて行くとエサが大変ですが。

っていうか、そもそも外洋へ乗りだそうというのに、
水も食べ物も用意していかない、日よけもなくて直射日光にさらされるというのは
いったいどういうことだ。
まあその辺は目をつぶりますけれども。

最終盤は普通な話で良かったですね。
サプライズも1つあったし。
あれを見て、「風の谷のナウシカ」を思い出したのはわたしだけじゃないはず。

前半でひっかかったので心から楽しめたとはいえないが、
絵はとにかく素晴らしい。
こういう暗い世相の時には、環境映像みたいなつもりで見て吉ですね。

 

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