歴史ミステリの傑作と評される本作。
面白かった。
イギリス史の話なので正直細部はよくわからない。
わたしがイギリス史のなかで個別認識出来るのは
エリザベス1世とヘンリー8世、ブラッディ・メアリー、
(しかしメアリという名前の女王や后が複数いるので若干混乱気味)
あとはヴィクトリア女王くらい。
チャールズ1世と2世は幸薄い系の顏。ということくらいしか。
書かれている骨子を短くまとめると、
ロンドン塔で幽閉されていたあの幼い兄弟。
(名前はエドワード5世とヨーク公リチャードらしい。覚えられる気がしない。
ミレーが描いた美少年兄弟の絵がある。)
イギリス史上ではその兄弟を暗殺したのはエドワード5世の叔父で摂政だった
リチャード(のちの3世)だというのが定説で、
シェイクスピアにもリチャード3世を悪役として描いた作品がある。
しかし「時の娘」ではリチャード3世は兄弟を殺してないと推理。
・リチャード3世が王位につくにあたって兄弟の存在は血統的に障害にはならなかった
(先王には秘密裡に結婚した女性がいて、その女性が生きていたため、
先王王妃エリザベス・ウッドヴィルとの結婚は実は無効、
兄弟は根本的には私生児であるという理由。だったかな?)
・先王王妃エリザベスとの関係は良好だった。息子を殺されていたらあり得ないと思われる。
・リチャード3世のあとに王位に就くヘンリー7世は兄弟の失踪当時、
リチャード3世が殺したとも何とも告発していない。
リチャード3世が殺したのならその事実を声高に広めれば自分に有利になるのに。
・リチャード3世による兄弟殺害説はトマス・モアの著作が広まったせいだと
思われるが、これはトマス・モアの師匠筋に当たるジョン・モートンからの
聞き書きとして語られるべきものであり、リチャード3世と敵対していた
モートンの意見は信用できない。
・ヘンリー7世はリチャード3世を倒して王位についており、
リチャード3世の悪評を広めるのに積極的だったはず。
あることないこといっていた可能性がある。
――こんな感じかな。読み終わって3日も経つと忘れている……。
小説としては、怪我をして病院のベッドから動けないグラント警部が、
歴史好きの青年を手足として歴史の謎の解明に乗り出す。という話。
最初のきっかけが、グラント警部がリチャード3世の肖像画を見て
心惹かれたということ。ここ面白いですね。
グラントは誰の肖像画とも知らずに見て、
非常に責任ある立場にいる人物。完全主義者で良心的過ぎた人物と感じ、
その後にリチャード3世の肖像画だと知り、意外に思う。
イギリス史的には一般的に大悪人な人だそうなので。
周りの人に「どんな人に見える?」と訊いてみると、
看護婦は「肝臓を悪くしている人」だといい、
医師は「小児麻痺」
部下の刑事は「弁護士」
婦長は「殉教者」
先入観なしに肖像画を見た場合、見えてくるものは違うもの。
何年か前に安土に行って信長の肖像画を山ほど見たが、
二十何枚のうちには「え?これ信長?」と思うものもいっぱいあった。
ましてやリチャード3世とされているこの肖像画は、16世紀に模写された
ものらしいから。本当にリチャード3世かも100%ではないしね。
時間がないのでぐちゃぐちゃだが、備忘録として。
|
コメント