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◇ 池澤夏樹個人編集「世界文学全集1-06 暗夜/戦争の悲しみ」

「暗夜」他
残雪というペンネームを持つ中国の作家。
全体が170ページで短編が7つ載っている。そのうち「暗夜」が50ページで中編か。

えー、面白くないことはなかった。
だが別に好きではない。文学作品はこれだから……と思いながら読んだ。

どんな傾向の話かというと、悪夢を小説にしたような話です。
脈絡はあまりなく、整合性もあまりなく、そこはかとなく不気味で、
しかしどうなるかストーリーの運びは気になる。
7つの短編を通じて、みんなそういう作風だった。

ストーリーが気になるのだから面白かったと言えるだろうけど、
もっと読めと言われたらエンリョしたい。

日本語訳は読みやすくてオテガラだと思います。

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「戦争の悲しみ」
パオ・ニン。ベトナムの作家。
わたしは戦争の話は苦手でね……。これはベトナム戦争の話。

戦争と愛と人生の話。
と書こうと思ったが、戦争の中の愛と人生の話。が精確か。
戦争というもの、そしてそれが破壊した主人公の愛と人生。

若くして志願して戦争に行った男がそれなりに偉くなって戦争から帰って来るが、
その間に運命の恋人も戦争で傷つき、幸せにはなれず。苦しんでいく2人。

わりと時系列が不規則で、あっちこっち話が飛ぶんだけれども、
文章が端正で読みやすかった。主人公は戦争から帰って来てからは作家で、
しかし書けずに苦しむ。生活も荒れて行く。

その苦しみは戦争の想い出から来ている。
自分の命を挺して主人公を守った部下たち、主人公の身代わりになるように
死んでいった友人たち。
戦争さえなければ、少年少女として出会った運命の恋人と理想的な恋をし、
人生が送れるはずだった。
その幻も胸を刺す。

相手や味方の醜行、飢え、恐怖、痛み……
ああ、戦争は醜いよ。醜いものは嫌いだ。見たくない。
ベトナム戦争について読んだのは初めてで、おそらく今後読むことはないだろうが、
戦争はどこの戦争でも同じだ。美しい戦争などはない。

ただ、最後にまったく別人の視点を使って話を収束させたところが、
いやだなあと思った。
最初から主人公の視点(と運命の恋人の視点)で語って来たのなら、
最後まで語らせるがいいじゃないか。

これだと、話はうまく閉じられるかもしれないが
単に「お話」になってしまうよ。

 

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