前作、「ヒストリアン」はけっこう面白く読んだ。
あれはネタが良かったんじゃないかな。学者がおいつめられるのと
謎の中心がドラキュラだってことで食いつきが良かった。通俗と堅さのバランス。
そこを実直に語っていくスタイルが売れたんだろうなあと思うけど。
今回の「白鳥泥棒」は全体をまとめるストーリーが地味すぎたね。
最後の最後を開かされても「……で?」という感じだったし。
現代パートと過去パートは、あえて関わらせる必然性があったどうかと感じた。
ロバートが一枚の絵に惚れたってだけだもんね。
むしろ語り手が惚れて執念深く調べる、っていうんじゃないとダメだったんじゃないか。
結局仲良しだと思っていた画商が下司で、不倫関係をばらすぞといって
絵を回すよう言ったってことだけでしょう。
それを「白鳥泥棒」といって400ページ上下巻の話に引っ張るには無理があったよ。
半分くらいの話ならまだしもね。
コストヴァは前回成功した手法でまた書いてみたんだろうけどあれとこれとは違う。
あっちはけっこう子供っぽい「ドラキュラの話」。
追いかける過程もサスペンスフルな動きがあった。
が、これは単に家族の間での秘密だもんね。これは地味過ぎて面白くないよ。
精神科医が患者の、別れたばっかりの元カノと付き合いだすのも職業倫理に悖るんじゃないのか。
守秘義務的にもまずいと思う点いろいろ。
無駄に人数が多かった、という印象の作品だった。
今後、この人の本は翻訳されるのかしらん。
また登場人物の視点を細切れにして並べるだけの作文法ではだめだと思うよ。
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