前の「高原王記」からは若干持ち直した感じ。
なかなか面白く読めた。が、やっぱりこの話で単行本5巻は少し長すぎるね。
3巻までは面白く読めたが、4巻から5巻前半まではダレた。そして最後もどうかなあ。
わたしは、この人はほわほわっとした素人っぽいところが多分に残っていて、
だからこそ「僕僕先生」初期の、力の抜けたファンタジーが一番いいと思っている。
ファンタジーでいい。歴史ものじゃなく。
今作は島原の乱の話を基盤にしているから、どうしても読み方が歴史物寄りになる。
そうすると色々気になってくるところはあるわけじゃないですか。考証的に。
考証とまで言わなくても、いやいや、町人を武士が物々しく警護して行ったりしませんよ、とか、
そもそも町の庭師を大名が雇うか、とか、その町の庭師に本国の庭を見学させるか、とかね。
主人公たちが切支丹でいずれは武力再起を図るという話だったが、
それにしては計画が全く具体的にならず、それならそれで天草四郎の復活に
期待がかかるかというとそんな兆しはさらさらなく、全体的に中途半端でしたね。
聖遺物を武器に公儀と戦う異能力者集団、ということなので十分にファンタジーなのだが、
設定を歴史に借り過ぎているのはちょっとずるいなと思う。
歴史の魅力的な設定だけ借りて細部を疎かにするなら最初から架空の国を作れと。
恩田陸なんか見ろ、実際の土地を舞台に小説を書くこともよくあるけれど、
そういうチェックが嫌だから土地の名前はがんとして書かないから。
と、感想としてはツッコミが主になるが、でも本作は仁木英之がのびのび書いているので
良かった。書きたくて書いていると感じた。
でも最後は無理くり閉じた感があるけどね。ちょっと読んでて意味がわからなかった。
振袖火事まで巻き込む必要はなかったと思う。
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