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◇ 森見登美彦「聖なる怠け者の冒険」

相変わらず変なもんを書いているねえ。

この人が書くものはだいたい京都が舞台で、なんやかんや作品世界が繋がっている。
これは「宵山万華鏡」のいとこで、「有頂天家族」のはとこくらいの話だな。
相変わらず極彩色の、しかしちまちまとした作品世界は森見登美彦らしくて良かった。

しかしわたしは、森見登美彦には思わず噴き出してしまうような奇天烈な文章表現を求めたい。
作品世界は奇天烈で良かったけど、文章そのものに奇天烈さはなかった。
奇天烈というと奇天烈すぎるか。ほのぼのとした奇天烈。……何がなんだかわからんな。
わたしが読んでいないだけかもしれないが、言い回しで面白がれる現代作家なんて
森見登美彦と宮田珠己くらいなんだから(←見聞が狭すぎる)、
彼らにはもう少し頑張って欲しい。

これ新聞連載なんだって。……なんだって!!!
逆立ちしたって森見登美彦に新聞連載なんて出来る筈がない!と断言したら
森見登美彦が落ち込むだろうから言わないでおいてやるが(←もう遅い)、
いやー、彼の作風に新聞連載は合わなかろうね。雑誌連載だって危うい。
彼の真価は書下ろし、しかも締め切りに余裕ありありの。
でも多分締め切りに余裕があったら永遠に作品は完成しないタイプだわな。

まあ無謀なことに挑戦したとは思います。だって無理だよね。
新聞連載って長編じゃないですか。でも長編ながらも原稿用紙ほんの数枚でなんらかの
盛り上がりを必要とする。そんな不自然な形式を書くのは難しいと思います。
やはりよほどの筆力と構成力を持った作家じゃないと……

昨今は誰でも新聞連載をやっているようだが、構成力がない作家に新聞連作は
させない方がいいと思います。まあわたしはそもそも読まないから
どうでもいいのかもしれないが、単行本にまとめた時点で読むので、
さらに「なんだこれは」感が出る。

本作については新聞連載と、単行本にしたものとではどうもだいぶ内容が違うらしいよ。
ほぼ書き直しという状態らしい。……さもありなん、と思う。
まあわたしは書き直して貰えるならうれしいけど。その方がまともだろうし。
でも一旦発表したものをまた書き直すような真似はやっぱり作家にとっては大変だろうし、
基本的にはそこまで求めません。だからこそ一定以上の筆力がある作家だけ書いて欲しい。

巻頭につけられた登場人物のイラストは可愛かったけど、
やっぱり挿絵は想像力を限定するものかもね。
あ、でも小和田くんなんかは普通すぎて毒にも薬にもならなかった感じか。
所長だな。イメージを限定されたのは。悪く限定されたわけではないが、
限定されたこと自体はマイナスだったかもね。野放図なキャラクターだっただけに。

実は本作は蔵書。数年前にたしか平積みで目について、珍しく本屋で買った。

そして本を読み始めて数十年、ほぼ初めて積読本がなくなりましたッ!
英語の本と面白くもない日本文学全集はあるから、厳密に言うと読む本はあるのだが、
寝込んだ時の非常用に積んでいる本がほぼなくなったので困る。

何か買っとかないとなー。しかしもう、本は1回読む時間しかない。残り人生的に。
1回読むだけの本を買う意味があるか……。図書館で十分じゃないか。
あ。別に積読本じゃなくて、蔵書を読み返せばいいんだ。今気づいた。
うちの本棚の本も本棚に並んでいるだけじゃつらかろう。
たまには読んでやらないとなー。

全然作品とは離れたところの話で終わるのであった。ちゃんちゃん。

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