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◇ キアラン・カーソン「琥珀捕り」

「琥珀捕り」なのか?「琥珀採り」じゃないのか?というのが小さな疑問。

それはそれとして、面白かったです。さすがにねー、けっこうみっちりした本なので、
さくさく読める系ではないけれど、最後までちゃんと読んだ。

これはね。千一夜物語とアイルランドのストーリーテリングと蘊蓄を足して3で割った……
というより、割らずにそのまんま足した作品ですね。

全体的な話の紡ぎ方は千一夜だと思うのよ。
若干異国情緒も漂う気がするし。
そして語り口はアイルランド。詩人の国、文学の国、「ユリシーズ」を生んだ国の語り口。
で、その話題は古今東西縦横無尽に駆け巡り、ここは現代の文学者たる
キアラン・カーソンの博学を見せつけている。

あちこちに、まるでこぼれるように琥珀が出て来る。
なんていうのかしら、それが秘密の合図のようでね。
繰り返される琥珀のモチーフがこの1冊を引き締めている。
これがあるとないとじゃ大違い。しかも琥珀ってのがいいじゃありませんか。
上品で古代的で、魔術的で柔らかな手触り。光り輝くわけでもなければ明確な輪郭を描くわけでもない。
水晶でも真珠でも良かったかもしれないところ、琥珀を持ってきたところ、味がある。
その選択が天才的。

あえていうなら、琥珀の頻度は半分くらいでも良かったかもしれない。
そのくらいの方が秘密度が増した。

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