面白かった「徳川の夫人たち」の続編。
とは言っても、前回主人公だったお万の方は(まだ生きててちらっと出てくるけれども)背景に退き、
次の主人公は、まず綱吉時代の大奥の取締役、右衛門佐。
この人はお手は付かずに、大奥を束ねて運営した賢女、美女――として描かれている。
だた、吉屋信子は、お万の方は心から入れあげて謳いあげているけれども、
右衛門佐の描き方は、誉めそやしてはいるが2段階ほどトーンが下がる。
面白かったけどね。
前半が右衛門佐の話で、後半になると綱吉が崩御し、あとは代々の将軍の御台所や側室、
侍女たちをちょっとずつ大勢、取り上げていく形になる。
これはこれで面白かったが、やっぱり正編の方の力の入れ具合とはだいぶ違うと感じる。
しかし吉屋信子がこれを書くにあたってはだいぶ勉強したらしく、
その勉強の成果を披露してくれて、そういう小知識的なところが面白い。
1冊の後半、順々に書いていって、一応篤姫、和宮まで行くんだよね。
とはいえ、篤姫、和宮に割く紙数も30ページ程度なのでほんとにアウトライン程度。
篤姫や和宮あたりをがっつり書きたくはならなかったかね?
まあでも、これを新聞連載していたのは著者70歳を過ぎている時点なので、
改めて書きたくても体力的にままならなかったのかもしれない。
わたしは篤姫なんかは、大河ドラマで主人公になってからようやく知ったので、
おそらく歴史好きの人たちの間でも、そこまで有名ではなかったかも。
1970年辺りに篤姫とか和宮を取り上げていたら、つまらない誉め言葉だけれども
「先見の明があった」ということになるかもね。
ただ吉屋信子は政治がらみはおそらく書けなかった人だと思うので、
幕末の風雲急を告げる時代を上手に描きながら2人の女性を書くのは無理だったかも。
「篤姫」の大河ドラマの原作は宮尾登美子だったそうだけど、
わたしは宮尾登美子は「クレオパトラ」で激しく幻滅して以来、信用してないんだよね。
それともあれは、エジプトだったから失敗したのか。
吉屋信子はあとは「源氏物語」。
朝日新聞社出版局
売り上げランキング: 897,501
コメント