PR

< 昭和元禄落語心中 >

このタイトルでどういう話になるのか、見てみるまでさっぱりわからなかった。
見終わった後もすっきりわかっているとは言えない。ちょっと複雑。
ま、とりあえず、戦前戦後の落語界を舞台にした物語です。

全10話。1話目、既に押しも押されもせぬ噺家になっている岡田将生(八代目八雲)の所に、
刑務所帰りのヤクザが入門を懇願する。普段弟子を取ったりはしない岡田将生だが、
例外的にそのヤクザ(のちの与太郎)の入門を認め、家に同居させる。

その後は5回かな、回想として若い頃の八雲とその相弟子である助六の因縁が語られる。
……わたしは「いつになったら心中の話になるんだろう?」と思っていたよ。
だってあれは全然心中じゃないじゃない?映された部分は、あれは純然なる事故だもの。
前から、死の部分は相当謎めかして予告していたのに、実際はあれかあ。という感があった。
回想が全体の半分ってのは長かったね。

全部見終わって思うが、回想が5回、それ以降は1話からの続きなんだけど、
時間的には何年か後の話として始まるから(そして終盤はさらに八雲の晩年まで)、
ちょっと時間配分的に落ち着かない気がした。
回想部分に比べて、リアルタイム部分が少し弱かった。
なんだったら回想部分8話にして頭と尻尾をつける、という話でも良かった気がする。

何しろ小夏の子の父親が語られない……。
そこを語らなければ片手落ちというか両手落ちというか。
どうしたかったんだろう。あの人しかいないのに、少なくともドラマでは
そういうわけではなかったですよね。そこがないと現代パートの意味が半減すると思うが。

役者たちは人に合っていたし、がんばっていた。
何しろね。落語ですから。落語という芸の道に尽くし、取りつかれた人間の話なんですから、
生半可なことではそう見えないんですよ。
前にも「しゃべれどもしゃべれども」か何かで書いたことがあるけれども、
落語って劇中劇の中でも最難関ですよ。

声・動作・表情が一体となっているものだから吹き替えも不可能。
スローモーションも不可能。エフェクトをかけたからといってどうなるもんでもないし、
何しろ「笑い」だから、素人にも判別用意。玄人にしかわからない良さは存在しない。

今回はがんばってました!
まあぎりぎりのところを言ってしまえば、役者による落語であるのは変えられないのだが、
その中の最上クラスである。
逃げなかったもんね。岡田将生も山崎育三郎も。けっこうな回数演じて、演目数もけっこうあった。
頭から終わりまで全部覚えたわけじゃなかったかもしれないが、その努力には頭が下がりました。

岡田将生は素直なイケメン俳優ってだけかと思っていたのに、今回は難しい役をやりましたね。
落語。で名人。で狷介な人柄。
成功していた。だいぶ段階が上がったでしょう。横並びのイケメン俳優の中で一歩リードしたと思った。

山崎育三郎はあまり見たことがない人で、プリンスキャラだと思っていたが、
今回はむさくるしい役でした。へー、こんな役もやるんだ。
大政絢はすごく雰囲気に合っていた。最初のミステリアスな美女ぶりは魅力的だった。

成海璃子。……あれじゃぐれるよなあ。最終的には幸せになれるとはいえ、
長い間不幸な人生を送ったといっていいかもしれない。
まあ、救いは与太郎ですな。
性格的には与太郎の明るさが、ともすれば崩壊しそうになる人間関係をなんとか生き永らえさせ、
次には信太郎が存在として全員を家族として結びつける。

疑問は少々ありつつ、全10話、見て良かったドラマでした。
2話目くらいは辛気臭くて止めようかと思ったんだけどね。
辛気臭いのは最後までそのままだったんだけど、見てて良かった。
でも本来はきっと、もっと複雑な内容を持つ原作だったんだろうな。
おそらくドラマはそれを換骨奪胎した。そんな気がする。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

NHKドラマ10「昭和元禄落語心中」【Blu-ray】 [ 岡田将生 ]価格:15390円(税込、送料無料) (2019/1/12時点)

コメント