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◇ ダン・シモンズ「ハイペリオン」「ハイペリオンの没落」

大森望という書評家が「現代SF最大最強の大傑作である」と書いていたので読んでみた。

大森望がいつの時点で書いた言葉か不明だが、ダン・シモンズの「ハイペリオン」出版は
本国では1989年(日本では1994年)、「ハイペリオンの没落」は1990年。
まあ二十数年前の「現代」ですよ。

SFってジャンルは難しいですよね。特に昔のものは。
他の本だと90年代出版でもそれほど違和感なく読めるものも多いが、SFの場合は、
何しろ当時書いた未来を、今読むわたしたちは正答率をチェックしながら読まなければならない。
当時の作者が思い描いた世界と、今の世界の方向がどの程度重なっているか……
本の中のこれは今の何にあたるのか、まったく対応するものはどれなのか、
作品世界を二重写しにして読まなきゃいけない。虚心坦懐に読めない。

で、そういう状態で読むとですね。

正直いって、世界観がよくわからなかった。
アウスターは異星人の侵略者?コアって何?ウェブって何?スフィアって何種類もあるけど何?
部分部分で説明されてて、その時は納得するんだけど、そのうち忘れて
「なんだっけ?」ってことになる。
あまりにも壮大すぎるんです。

キーツの部分が特にわからないんだよなあ……
キーツがなぜキーツなのかをおいても、神になるとかならないとかはやはりよくわからない訳です。
キーツ部分とシュライクの存在意義と、時間遡行の辺りがまるでわからない。
レイチェルを神に捧げることの意味とかね。
まあわたしも加齢により相当に理解力は落ちていますけど、
この世界ってすっきり腑に落ちて読め進められるもん?

読める、という意味ではまあまあ面白かった。
うんざりするほど長い、ということを除けばね。
これ「ハイペリオン」と「ハイペリオンの没落」にしない方が良かったよね。
だって(読み終わってびっくりしたんだけど)、「ハイペリオン」ってまるっきり導入部ですよね?
それだけでは言わば前座。一応の状況を説明し終わって、それからどうなるというのが
「ハイペリオンの没落」。「ハイペリオン」の1~4巻にすべきじゃなかったか。

一番シンプルなところで、レイチェルとその父の部分はわかりやすくて一番面白かった。
あと、単にかっこいいってだけでシオが若干好きだった。
あそこまで大風呂敷を広げたところからハッピーエンドに着地させた腕力には感心するが、
最終盤は何を書いているのか理解できなかった。
理解できる方は納得出来るラストだったんでしょうか。よくわかりません。

続編で「エンディミオン」「エンディミオンの覚醒」があるそうで、読む予定だったのだが、
やめときます。有限な人生の読書時間は別なものに充てたい……。

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