本を閉じた瞬間、ようやくわかった。……あ。そうか。ローマ帝国衰亡史。
まあ読んでる間もローマ帝国のパロディなのはよくわかるんだけども。
最初、淡々とした書きぶりで、説明をしてるのかなーと思っていたら、その調子で最後まで行った。
……淡々だけれども内容はやはり“極端”だね。
下高井戸オリンピック遊戯場(このネーミングからしてすでに極端……)を作った天才的な双子の兄弟がいて、
その兄弟が珍しい精神症例としてマッドサイエンティストに幽閉され、その兄弟を巡る攻防になるのかなーと思いきや、
その創世の双子はそのままあっさり忘れ去られてしまう。多分幽閉されたまま死んだのでしょう。
今思えば、ロムルスとレムスの双子になぞられてるわけやね。
造物主が去った下高井戸オリンピック遊戯場では、凡人たちが右往左往。
台頭してくる権力もあり、分裂あり共闘あり、元老院を設置しプリンチペを決めるなど、うん、これローマ帝国。
まあ遊戯場にローマ帝国のパロディを持ってくるという点で、もうすでに極端なのですが。
ローマ帝国のみではなくて、あちこちから色々もってきて詰め込んでいると思う。
思いついたことをすべて盛り込んだ感じ。極彩色。
たとえていえば、某ディズニーランドを100万倍の規模にして、タイガーバームガーデン(近頃サッパリ聞かないが)風味を足し、
シュールレアリズム的な、かつまた成金的な超巨大テーマパークとした感じ。
しかし遊戯場といってもただの遊戯場ではない。あっという間にビックバンを起こし、
日本の国家規模を超えて爆発的な成長をする。
下高井戸オリンピック遊戯場は、権力闘争を繰り返しつつゼウスガーデンに改称し、
1984年の開業から(開国か)2089年にその命が尽きるまでをこの小説で描いているわけだから。
タイトルから、もっとSF寄りの話かと思っていた。近未来に作られる、何等かの疑似空間。
そこに取り込まれた人間が、洗脳やら拘束やらを振り切って自由になる話というような。
そうしたら、物語はもっとハチャメチャでした。ギャグというよりだいぶ突き抜けたコメディ。
読みながら「極端な」という形容詞が浮かんでは消えていた。この人、極端にしつこく例を挙げるんだよね。
まあそこが表現のキモでした。
シュールでキッチュな部分を楽しめればかなり楽しい小説だと思う。
ネーミングの妙(いわゆる何々の妙、という意味ではなくて本当にミョーなネーミング)も楽しめるしね。
なぜこの役柄でこの名前?と悩むものも多々あり、深い引用があってこれなのか?それとも何となくつけただけなのか?と
考えるのも楽しい。
諸手をあげて推薦は出来ないけれども、たまに変な小説を読みたい気分の時にはお薦め。
角川春樹事務所
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衰亡史、というわりには盛業に向かうところもけっこう書いているので、正確には盛衰史であろう。
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