イメージが全く違った。年代も違った。1904年生まれの作家だって。
SFを書いているイメージだったのだが。わたしは誰と勘違いしていたんだろう。
……すまん、もしかしたら「ソイレント・グリーン」かも。人間と映画を混同するなよと思うが、
映画の話をどこかで読んで印象的だったから。グリーン繋がりでイメージが残ったんだろう。
それはそれとして、今回読んで、けっこう親近感を持った作家。
好きな作家と親近感を持つ作家というのは似て非なるものである。
好きな作家は、自分と似てる傾向の人ももちろん含むが、まったく自分にないものを持っている人もあり得るでしょ。
親近感を持つ作家は、好きな作家でもあり得るが、嫌いでもあり得る。
情熱……というといい方向にイメージが傾きすぎるか。情動を冷静に書き綴っていくタイプの人。
そう思うのは、今回は愛憎劇の小説であり、しかも主人公が作家だから。まるで私小説みたいに見える。
人妻サラとの不倫、別れてからの執着、彼女の夫、新しい恋人らしき男。
こう並べていくとド不倫恋愛一直線だが、語り口が冷静なので読みにくさはありません。
訳がお手柄。ちょっと癖のある地の文のレトリックを愉しんだ。
しかし恋愛ものというよりは愛憎もので、愛憎ものというだけではなく宗教もの。
最終的には神様が恋敵ということになるから。
こういう冷静な雰囲気の小説で信仰問題を持ってくるというのが意外。
そこが良かったのか。当時新しかったのかな。
はっきりは書いてないけれども神様に敗れましたという話。
筆運びが上手いのでそこまで不満はもたないが、奇跡の持って来かたがだいぶベタ。
わたしはむしろ合理主義者の言い分に心情的には近いので、そういう着地点は少々嫌ですけどね。
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この人の作品は今後読んでみる。この作品はどうも王道の位置にはないらしいので。
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