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◇ 松井今朝子「吉原手引草」

これは、手法は有吉佐和子の「悪女について」と同じだよね。
インタビューで徐々に事件の姿を浮かび上がらせていく。
「悪女について」はその巧みさに相当感心したけど……巧みさという意味ではこの作品は一歩も二歩も及ばないね。

しかしこの作品の肝はそこじゃなくて、吉原風俗の雑学。ここのところは相当に面白かった。
わたしも主に落語で吉原を読んで、多分平均よりは知識がある方だと思うけど知らないことがたくさんあった。
……具体的に例を出すべきだと思うんだけど、もう本を図書館に返したので具体的なことは忘れた。
もうこのトシになるとなまなかなことでは新知識は定着しないのであった……
でもその時「へー!」と思うことも精神の活性化には役に立ってると思う。多分。

ほとんど出てこないけど、葛城が魅力的だなあ。……ただ正直、真相はちとショボイ。
こういうことだったんだよ、ってだけでパツッと終わってそれだけだから。
でもそれは予定通りというか、こういう話でそこからさらに話を広げていくのは蛇足だろう。
むしろその後の葛城のことも知りたいんだけどね。その余韻も楽しめってことなんだろうね。

ページターナーな作品だったので、最後の数十ページは家読みした。
この人、吉原に詳しいなあ。そのうち江戸風俗関係のテレビ番組に呼ばれたりするんだろうか。
見たいような見たくないような。出たら見る。

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