今は亡き児玉清が大絶賛していたミステリ。
この人は大変に本が好きだった人らしく、NHKでも「週刊ブックレビュー」の司会を大変楽しんでしていたし、
有川浩の「図書館戦争」も絶賛し、文庫本では対談もしていたし、まあ正直、彼のエッセイは読んでみたら
そんなに好きではなかったんだけど(^^;)、その本に対する愛情ゆえに親しみを感じる人物。
うん。面白かったですよ。
導入部は若干経済関係寄りでカタめなので、ずっとこんな調子だったら飽きるなと思ったが、
主役のキャラクターが登場すると、彼の性格が気持ちよく、人間関係も良かったので安心した。
キャラも関係性もギスギスしているのはキライなんです。温かみのある方が好き。
けっこう海外ものは多い気がする。冷たい感じのスタイル。そういうのじゃなくて良かった。
途中、うわ、これはグロに行くかも……という部分が2ヶ所くらいあり、そっちの方向に振れると
読めないなと思ったんだけれども、わりとすぐ温かみのある方向に戻ったので無事読了。
上巻はわりとのんびり話が進む。
下巻になった途端に謎解きが進行し、下巻の前半部あたりが一番ワクワクしますかね。
推理というか、捜査が着実で、多少都合が宜しすぎる部分がないでもないが、本格推理的な無理のなさがない。
本格推理の、推理のための推理もキライじゃないけど、現実の調査に準じた展開ですっきり読める。
事件の設定に無理がないね。
結末は、予想できないとは言わないけどテンポや流れなどが見事なので読んでて気持ちいい。
スウェーデンの人が書いた話なので舞台はスウェーデン。馴染みがない国。
最初から海外向けに書くわけないんだから、スウェーデンについて基礎的な説明なんかは当然ないんだけど、
それでも細部が時々目新しくて、ほほーと思った。
わたしの北欧のイメージは、けっこう単純に“いいところ”でさ。
福祉国家とか北欧デザインとか、国のサイズが小さいこともあり、他の国よりもスマートに機能している国という感じ。
だが実際は問題もどっぷり抱えているし、寒いし日照時間は短いので、暗さからはどうしても縁が切れないらしい。
かなり昔に読んだ「マルティン・ベックシリーズも」暗い雰囲気の話だった。
それに比べたらこの小説は暗くはない方だね。
ムーミンも暗いし。あ、ムーミンはフィンランドだった。フィンランドもノルウェーもスウェーデンもいまいち区別がつかん。
でも日本も韓国も中国も区別がつかんという西欧人も多いだろうから、まあそんなもんでしょうね。
各国で絶賛された作品のようなのだが、実はこの作者、これが出版される前に心臓発作で急死してしまったそうだ……
これが第一作で、第三作までは出版されてるんだけど、長生きしたらもっとたくさん作品を発表しただろうから、
3作で亡くなってしまったのは残念だ。それでも3作あっただけいいのかもしれないが。
![]() ミレニアム(1 〔上〕) [ スティーグ・ラーソン ]
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ラストシーンが可哀そうなの。切ないね。リスベットは2作目も3作目も登場してくれるといいな。
ええっ!4が出てるよ!別人が執筆してるらしい。どうなんだろう。質を保てるんだろうか。
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