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◇ D・H・ロレンス「チャタレイ夫人の恋人」

これってたしかだいぶエッチな作品だったよね?
しかしわたしももうオトナだし。ロレンスを何冊か読んでみようという時に、
「チャタレイ夫人の恋人」を忌避するのはどうだろう、と思ったので読んでみた。
いや、期待に反して?普通に純文学でした。

たしかにセックス描写は分量的にも多いし、詳細といえば詳細なんだけど、あくまで純文学風に詳細。
主観的、感覚的な「描写」なので、これを読んでコーフンするのはむしろ難しかろうなあ。

100年前といったらさばを読みすぎだが、1928年出版。それにしてはだいぶ新しいと感じた。
同年出版の日本の小説をWikiで探すと、江戸川乱歩の「陰獣」。谷崎潤一郎の「卍」。
……いや、これらを意図的に拾ったわけではないが、他にある程度イメージの湧く小説ってあまりなかった。
海外ならクリスティのポアロ物「青列車の謎」、モームの「アシェンデン」。

そもそも最初の創作動機は、鉱山で働く労働者の劣悪な環境をテーマに、ということだったらしい。
それがだんだん鉱山主の妻の閉塞的な生活、そして森番とのセックスおよび恋愛の話にシフトしていった。

真面目な純文学だよなあ。
これねえ、裏表紙のあらすじ紹介がヒドくてね……。新潮社。こんな風に書いて恥ずかしいと思わないのか。
全然内容を表してない。一体これを書いた奴は内容を読んで書いたのか。

閉塞的な環境に置かれた鉱山主の妻コニーと、鉱山主が雇った森番であるメラーズ。
……この関係性から、わたしはてっきり「一盗二卑三妾」的な話だと思っていた。あらすじと同じように考えていた。
(初めて知ったが、一盗・二卑・三妾・四妓・五妻まで続くのね)

が、全く違った。その関係性は関係性として、メラーズは雇い主の妻という立場に興味を持って関係を始めたわけではないし、
コニーも卑に惹かれたわけではない。
メラーズとコニーの個性が(ごくごく普通に)恋愛対象として惹かれあった。
孤独な二つの魂。その寄り添い方はむしろ純情でいじらしい。

むしろテーマは、性愛というより階級差のある恋愛かな。そう言っちゃうと薄いか。
コニーは小娘のようで純情で無縫、メラーズは複雑な性格で魅力的。
全体的に明晰に心情が語られていて、好きな文章だと思った。
かなり頻繁に心に親和する文章があった。そういう文章を書く著者ロレンスに親近感を抱いた。

ただ、最後があまりにもデクレッシェンドで終わるので……
実際の不倫はもっと泥沼だよなあ、と思わないこともない。特に夫であるクリフォードの陰湿っぽい性格なら、
不倫を知った後にはヒドイことをやりそうだ。
まああまりヒドイ話を読むのは嫌いなので、こういう感じで終わってくれたのはむしろ感謝ですが。

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……でね、今回をこれを読んで、すごいことを発見した。
わたしが「チャタレイ夫人の恋人」だと思っていたのは、実は「エマニュエル夫人」だった。
オッパイを出して、籐椅子?に腰かけて煽情的にこちらを見ている女性のポスターを再三見た記憶があったのよ。
小説ではそんなシーンはないし、これは小娘のようなコニーではないよなあ、
映画では売らんがためにポルノにしてしまったんだろうなあ、と読みながらずっと思っていて。
しかし読み終わって検索すると、全然別物だったのでした。

まあ、やっている女優が同じ人なんだから、混同しても無理ないかと思われる。
どっちも「夫人」だしね。

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