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< 海賊と呼ばれた男 >

いやーびっくり。岡田准一。
演技が上手いのか。あるいはジャニーズにしては演技が上手いというべきなのか。ここ数年の作品を見て、
どっちかなあと思っていたのだが。
一時期は、わたしの中では大層高評価だった。「花よりもなほ」「SP」の顔芸……もとい、表情の演技とか良かった。
だが「軍師官兵衛」と「図書館戦争」で、ちょっともったいぶりすぎ?と思っていた。
「永遠の0」は見ていない。

そしたらそのもったいぶった感じが、この年齢のアクの強い会社社長を演じると、見事に活きるじゃないですか!!
顔は特殊メイクの恩恵を受けているとはいえ、ほとんと違和感がなかった。だみ声も良く作った。
36歳でこの年齢の役柄が出来たら立派!60過ぎまで役者としての需要あるよ!この映画で保証。
最後の最後におまけのようにある老人期役ではなくて、冒頭が老人期で、そこから回想で若い頃に戻り、
そしてちょくちょく老人期と若者期を行ったり来たりしながら一代記を描く。
後半3分の1くらいは老人期だったかも。なので老人をしっかり演れなきゃ失敗なんだよね。
いや、けっこう見直しました。

前にNHKか何かの番組で、この人の話、見たことあったわ。すっかり忘れてたけど。
出光興産社長をモデルにした話だったんだね。イラン行きのタンカーの件りでようやく思い出す。
これは……感動していいんだか、無謀さを責めればいいんだかわからないけど、
よくよく考えれば、単によくやった!で済む話でもないと思うけど、映画の中の話としてはまあ痛快でしたね。

今回の話はいろんなエピソードを詰め込むタイプ。時系列をある程度前後させて山場を作ってるので見飽きない。
あ、そうか、なるほど、若いころから素直に時系列だとイベントの色が変わり映えしないので、
わざと行ったり来たりさせているのか。納得。

その代わり心理描写はあっさりしている。特にネガティブな方向の心理描写はだいぶ抑え目。
そこらへんがわたしはありがたかったけれども。
最初、戦争シーンから始まった時は、うわ、これ最後まで見られるだろうかと心配になった。
戦争ものは苦手だ。辛い、苦しい話は見たくない。本作もわたしにしてはギリギリのラインだった。

でも救いは、店員がみんな店主の味方なことだね。
実際はそれはもう賛否両論、毀誉褒貶、いろいろあったんだろうけれども。
映画で描かれたより、えげつないこともいろいろしてるんだろうけれども。
映画で描かれたような爽やかな関係性ではなく、もっと利害損得の部分で構成された人間関係だっただろうとは思うけれども。

でもタンクの底さらいなんてところは、やっぱり泣けた。
お約束ながら、「ワシも下へ降りるぞ!」というところで泣けるし。
ちなみにあのシークエンスは、まるで「レ・ミゼラブル」の冒頭を思わせるミュージカルみたいになっていたが、
狙いましたかね?

キャストはもう男ばっかり。わたしは男くさい映画があまり好きな方ではないが……
ここに出ている役者さんはみんないい役者。
吉岡秀隆の立ち位置とか、そのヤワな感じのキャラクターとか、いいですね。彼が女性原理を担っていたかも。

堤真一、後半のここへ来ての登場かー。ちょい役でもったいないなーと思ったら、出番は少ないながら、
堤真一がやる意味がある役柄だった。演技的にも役者の格的にも説得力があった。
もったいないと言えば、全然描写されないで終わる綾瀬はるかも、この役を綾瀬はるかがやる意味があったか?と
思っていたが(しかしほんとにチョットしか映りませんね)、最後まで見たら、
綾瀬はるかの美人さが効いてるかもなーとは思った。

鈴木亮平は近頃ひいきの役者。やはりそれほど出番がないとはいえお得な役だった。
ピエール瀧も好きだ。この人も本来的には役者は本職じゃないはずなのに、ものすごく役柄が幅広い。……と思う。あんまり見てない。
「城下町へ行こう」のピエール瀧が好きなのよ。
國村隼も敵役を好演。
染谷将太もいい役。
野間口徹と小林薫は、出すぎず引きすぎず、いい味。二人とももうちょっと出ても良かったか?
みんないいキャスティングだった。

見て満足な映画でした。

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