仙台市博物館の企画展。特別展じゃなくて企画展。
絵図や書状。うーん、地味だろうなあ。
わたしは基本、エキシビに美術的な要素を求めているし、戦国時代に興味がないわけではないけれど、
そこまで戦国女子ではないし、あんまり面白くないかもなあ。……と思いながら行った。暇だったんです。
そしたら!けっこう面白く、入場料460円というお値打ち感も相俟って、大変満足してきたのでした!
斎藤報恩会は――けっこう面白い団体。
多分現在の地元民は全くその存在を忘れてしまっただろうけど、わたしの記憶にはかすかにひっかかっている。
まあそこまで愛着が持てる関りではなかったが。
とは言いつつ、斎藤報恩会寄贈と付いていなかったらこの企画展行かなかっただろうなあ。
報恩会寄贈の展示コーナーの前に、まず屏風。ここの屏風はけっこういいものが飾ってあってですね。
ちょっとした見ごたえがありますよ。わりと頻繁に入れ替えもする。
今回は松原探梁・探水親子。仙台藩のお抱え絵師だったそうだ。
しかし江戸在住だったともちょっと書いてあったし、仙台に地縁はないのかね?
探水の方は「大崎八幡来由記」なんて絵巻物を描いているんだけど。聞き書きで描いたのかなあ。
松原探梁「韃靼人狩猟図屏風」
このテーマ、流行ったらしい。モンゴル人が馬に乗って弓射ってる。特に歴史的イベントを描いたわけではないようだ。
同「和漢賢聖名所尽画冊」
百科事典以上の大きさ・厚さの画集。左側は絵で、右側は金地絵の上に書。なかなか趣味がよく、少し欲しい。
インテリアとして。まあインテリアとしてなら印刷では無意味だが。
松原探水「吉野・竜田図屏風」
ごくごく一般的な画題で、ごくごく普通の良さ。まあこういうものを大名は持ってないとね。
同「大崎八幡来由記」
カラフルで細かい。色がきれいに残っている。
わりと集中力が出てきたところで、次こそ――斎藤報恩会ではなく、伊達家関連の武具その他。
まあ展示されてるのは、刀、鎧、陣羽織といったものが数点ずつ、そんなに目新しくはないけれども、
物がいいので面白い。
「朱皺漆紫糸威六枚胴具足」
伝上杉謙信所用。とにかくド派手な赤いお面が前立についていて、大きさも人間が被れるくらい。もっと気持ち大きいかな。
三宝荒神を象っているそうだ。旧上杉家臣の登坂何某から献上されたらしい。
おそらくは……就職の見返りとしての献上であろうと想像する。相当立派なものなので、
人ひとり雇用しても(お金がかかるけど)欲しいというお宝だったろう。
矢羽って贈答品にしたのねー。初めて知った。
鞍も豪華なのがあったなー。刀もきれい。
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さて、次こそ斎藤報恩会展示品。
まあ何しろ絵図と書状がメインなわけで、一渡り見渡した時の印象は相当地味。
さくさくっと……しかしふと小学生用の解説が目に入る。へー、人取橋合戦配置図?
政宗の人生で、相当重要な合戦だよなあ。へー、こんなの残ってるんだあ。
よくあるじゃないですか、凸型の大小で陣の向きや人数、どこに将兵を配置したかってヤツ。
これはリアルタイムのものではなく、政宗の子だったか孫だったかが歴史保存の一環として(掛け軸として)
残したそうだけど、それを作った人の考えとか実際の取材とか、そういうのもイメージできるよね。
これで一気に引き込まれ。鬼庭左月が人取橋の近くに布陣しているところとかじーっと見た。
「摺上原合戦図」もあった。
二の丸御殿の図面。うわあ、二の丸御殿、広っ!!何部屋あるかなあ。50部屋くらいだろうか。こんなに広かったのか。
中奥に廊下は1本しか接続してないんだろうか。まあ隔絶感は必要とはいえ……不便だったんじゃないかねえ。
仙台城下図もいくつもあり。常設展で見たことがあるものもあったが、初見のものも多く。
これもじっくり見ていくとなかなか面白い。残念なことに、細かい文字は展示が遠すぎて見えないんだけどさあ。
もっと近くで見たかった。
仙台川、または長町川とも呼ばれるが本名は広瀬川、とか、
根岸・大野田・鈎取・郡山・小泉の村名が散見されたりとか。
うーんと、ここがこの道でお城がここだから……ああ、ここは薬師堂か、とか。
相当江戸も最後になってからの「仙台藩主参勤行列図」は10センチ×25メートルくらいの包帯みたいな巻物だけれども、
そこに朴訥な絵で、ほのぼのした感じの人物がずらーっと並んで描かれており。
途中、笠を落として拾う人もいて、厳粛というよりはのんびりした行列のイメージ。
戦国大名の書状もいっぱいあった。
晴宗や稙宗関連もあったが、面白く思ったのは
信長→遠藤基信(輝宗側近・政宗後見。「独眼竜政宗」では神山繁がやった役だね)
信長→輝宗
家康→輝宗
家康→遠藤基信
北条氏政→遠藤基信
柴田勝家→遠藤基信
なんて、有名人からの書状がたくさんあったこと。
ここで遠藤基信宛の書状が多いのは、実際の立場が重かったのもさることながら、
遠藤家で所蔵していた書状をまとめて斎藤報恩会が手に入れたことが大きい。残るって大事ですねえ。
戦国大名の手跡はみな気持ちがいい手だったよ。
言うたらみな押しなべて上手かったので、祐筆かなあとは思うけどさ。
本人が書いたらもう少し奔放な字や下手な字も混じると思う。
しかし単なる字として見る分に美しかったので、気持ちがすっとした。
仙台庶民関連のものもけっこうあったが、一番印象的だったのは「旅硯」「参詣記」。
これは国分町の紙店の手代の佐吉が、角田市の観音堂へお参りに行き、その道中を歌や挿絵を混ぜながら綴った旅行記。
「旅硯」を最初に出版して、好評だったので仙台周辺の神社仏閣を巡った「参詣記」も出したらしい。
仙台城下囲碁番付もあった。番付ですから、例の蒙御免ってやつですよ。
わりと有名人が並んでいて……東東來(絵師)なんかの名前もあったな。
……というようなものを、へー、ほー、と思いながら見ていったので大変時間がかかったようだ。
意外に居たもんねー。
12時前に着いて、見始めてしばらくしてからミニシアターの12時からの上映アナウンスをかすかに聞いて。
そして13時からのアナウンスが聞こえてきて「え?もうそんなに経った?」と驚いたんだから、
けっこう集中して見ていた。博物館を出たのは13時半。2時間近くも。
時間を忘れるくらい面白かったと言える。当然ながら出た時にはオナカぺこぺこ。とっととゴハンを食べに行きました。
前回の企画展も大変に面白かったが、フロックだろうと思っていた。
そしたら今回も面白かった。今度から企画展も視野に入れてみよう。ま、あまり期待はかけすぎずに。
ちなみに仙台市博物館は年末から3月いっぱい改修工事のため休館。
見ごたえがあるエキシビをやってくれるミュージアムは宮城県美術館と仙台市博物館しかないから、休館だと寂しい。
しかし再開時はそれに相応しく、金をかけたエキシビを持ってきてくれると思うので、期待してますよ。
ふふふふふふふ。
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