予告編の段階で大変楽しみにしていたし、超地元(実家が吉岡)の人から900円の前売券も早々にゲットし、
全国に先駆けて地域先行上映で5月7日から始まっていたというのに、やっと6月5日に見に行けました。
封切りから1ヶ月経ってまだこの入りはスゴイ。さすが地元。しかし全国的にも評判いいらしいよね。
周りで先に見た人の話を聞くと、意外にコメディじゃないらしい。
「コメディじゃなくて泣ける話だった」という感想多し。
いやー、わたしはむしろコメディが見たいなあ。と思いながら行った。
丁寧に作られた、いい映画でした。まあわたしはもっとコメディ色強くても良かったけどね。
話も、うっすらと無理を感じるところは多々あるんだ。
お上にカネを貸す、という計画が首が飛ぶような危ういものであるならば、宿場全体に広がった段階でヤバイのではないか。
そもそも数多の時代劇では、そして史実でも、ほとんどの大名が豪商・金貸しから大金を借りまくっているんだから、
それを今さらご法度扱いされてもなあという違和感がある。
学問的には、やっぱり駄目だったんですか?まあたしかにメンツってもんがあるから、庶民が大きな顔をして
お上に「金貸すぜ!」とか言ったらやっぱりダメか。
3000万なんて大金だから、それを何人かで負担するというのはもっと軋轢があるよねきっと、という気もする。
家庭内にもお互いの関係性においてもさ。まあそれをぐちゃぐちゃ書くよりは、今回の映画では美談でいいんだけど。
江戸時代の東北で茶なんか作れるわけが……なんでわざわざ茶師にした?リアリティがなくなるじゃないか。
と思ったら、実際に当時吉岡で茶を作っていたらしい……(実家が吉岡の人談)
びっくりする。茶どころは温暖で日照時間も長い場所じゃないと。江戸時代後半になってもひどい飢饉に襲われてた、
4月になっても5月になっても冷たいヤマセ吹く東北で作るかい。
今の時代だって5月前半のナイトゲーム(←楽天の試合ね)は寒いんだぞ!
途中で阿部サダヲが拗ねていなくなっちゃうのもどうかと……
高邁な理想のために行動したのに、弟がちょっかい出してきたと思ったら止めちゃう?
そんな程度の覚悟?そんな人に首がとぶかもしれない計画を任すのは嫌だなあ。
……とかなんとか色々細部は気になるが、全体的な流れと丁寧な作りにヤられて、
そういう重箱の隅はまあいいか、ということになる。「ん?」と思う話運びも、流れの心地よさでどうでも良くなるんだよね。
今回の豪華キャスト陣、それを活かしたお話。というのがテガラだろう。
普通はね、あそこまでたっぷりと役者を使うと、どうしてもだぶつき感とか出るもんだよ。
もっと人数が出る三谷組の作品だと、ネタとしてのカメオ出演しかできないもんね。まあそこも売りだが。
でも本作では、けっこうな人数出ている有名俳優を上手く使い切った。
そのバランスね。阿部サダヲを使って瑛太を使って、妻夫木を使って、あのバランスは見事。
その他に松田龍平とか寺脇康文もいるんだよ。
まず瑛太の軽さがストーリーの基調を決めたな。そこで雰囲気がぐっと爽やかになった。
内容がシリアス、しかも時代劇、という中でこの軽さは貴重。しかも新妻を伴い原っぱをのどかに帰郷。
そこから一気にてんやわんやになる流れもメリハリが効いてた。
阿部サダヲの唐突な訴状はだいぶ唐突なんだけど、ウマい運びだろう。
わたしがこの映画で一番印象に残っているのは、この後のシーンで、阿部サダヲが瑛太に「その方法は?」と
訊く時の目のキラキラなんだよなー。純粋というのを絵に描いたような瞳だと思った。
何たる顔芸。いやいや、ここは茶化すところではない。役者の表情の演技の上手さだ。
その一瞬で、“みんなのために尽くす穀田屋さん”が説得力を持つ。
しかし思っていたよりは阿部サダヲ、中心人物ではないんだけどね。途中で拗ねてどっか行っちゃうし。
いない時間がけっこう長かったかも。でも実はそれに気づかないほど他の人たちが活躍していた。
やっぱりバランスが良かったんだな。
妻夫木は実はそんなに好きではない。人気が一番あった頃の演技力からは各段に成長したとはいえ、
……生粋の役者とそうでない役者の味わいの深さは、例えていえば干シイタケと生シイタケほど違うと思うんだよ。
妻夫木はわたしとっては後者。生シイタケだって十分美味いけど、しかし干シイタケの出汁にはかなわないでしょう。
なので、浅野屋さんが実は、という部分は実はあまり心に響かなかった。別な役者だったらあるいはもっと。
まあでも妻夫木だって努力賞で、人物造形の部分は工夫を感じた。声の細い、穏やかな金貸し。
あれでいかにも憎々し気な金貸しだったら薄くなりますよね。
その辺りは西村雅彦に任せて正解。しかし話でモヤモヤする部分は、西村雅彦のようなガッツリ屋が、
和尚の話程度で心を動かされるとは思えないんだよなー。もっと因果応報の話とかを和尚からたっぷり聞いたとかにすれば良かった。
「……わが身のことばかり考えていると……」「……いると?」「地獄……行きかもしれませんなあ」とかの掛け合いとか。
ちょっとチープすぎますか。話が安っぽくなるか。
なぜに彼が大肝煎のキャスティングなのか、と事前には思っていた千葉雄大。
でもまあ、あの若さで(しかし童顔だからあれなので、彼だってもう27歳)あの俳優陣のなかで、
それなりに顔を出そうと思ったら、もしかしたらベストの選択なんだろうか。
大肝煎=大庄屋ならもうちっと貫禄がある人の方が……ナレーションで、代替わりしたばかりである、とか言ってみたらと
思っていたが、まあ蛇足かな。
意外に気にならなかった。揺れ動き方も中途半端で、話としてモヤッとする部分ではあるが、本人自体は健闘。
あとは……ユヅルですか。
メイキングで見ちゃったからなあ。でも彼も健闘でしょう。
フィギュアスケートであれだけ人前に出ている人だから、全然緊張しなさそうだと思っていたが、
やはり競技と演技は違いますかね。お疲れさまです。
なんかもっと言うべきことがあった気がするが、なんかもう十分長い。このへんで。
あ、そうだ。草笛光子御大万歳。
あ、それから松田龍平の「 却 下 」万歳。ヤな奴でしたねー。無表情ぶりがすっかり定着してしまって……
竹内結子の「……いりませんよ」の間合い万歳。
あ、そうそう、すっかり忘れていたが、実はわたしはこの映画で一番イイと思った人は堀部圭亮であった。
役柄的に。いい人じゃないか!しかも武士で庶民の味方なんて、なかなか出来ないよ。
磯田道史のマゲがあまりにも違和感ナシで、見ている時には全く気付かなかった。くやしい。
本間ちゃんも気づかなかった。
全キャスト・スタッフのみなさん。万歳。
コメント