池澤夏樹の父。そして辻邦生の同僚。辻邦生は「天草の雅歌」を福永武彦にdedicateしている。
そういう興味で読んでみた。
そういう興味で読むせいか、池澤の書く文章や辻邦生の書いたものにとても近い気がした。
所々で、「ああ、これは池澤の口吻」「辻邦生の書きそうな内容」と思いながら読んでいた。
池澤はもう少し理系的な雰囲気で、福永武彦はより抒情的。
詩論、文学論の熱っぽくコムズカシイ感じは辻邦生と似てる。
ただ、一冊読んで、しかもそれが亡くなった人たちの思い出をメインにまとめられた随筆集だと、
なんか飽きますね。冒頭の堀辰雄の思い出の部分は随筆として高品質だと思うのだが、
最後まで読むと玉石混交のイメージが強くなってくる。
随筆集を同じテーマでまとめるのはむしろキケンなことなんじゃないかなあ。
内容が被る所も多々出てくるしさー。所々ならまだしも、しばしばとか、またかと思うまで出てくると、
端的に言って飽きるさね。
軽井沢の別荘生活でもそうそう面白いことは起こらないんだし。
逆に面白いことだけを追って、面白おかしく書く芸風だったらそういうことも出来るだろうが、
福永武彦は日常雑記を抒情的に書くタイプだろうから。
そういうネタはそうそうころがってません。ゆえに昨今の軽井沢の変わりようを嘆く、とか、
堀辰雄や室生犀星の思い出を繰り返し書くことになる。
この作品の前に「風のかたみに」という王朝ものを読んだ。
今昔物語のテーマを伊勢物語風にした感じの、まあ平安時代好きのわたしは読んで損はない本だったが、
そこまで求心力があったかというと、特になかった。
なのでこの人の作品、全部ツブすまではいかないだろうな。
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