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< 第九軍団のワシ >(テレビ視聴)

全く期待しないで見た映画で、それもあずかって大いに面白かった。
とても地味なんだけれども。

ストーリーとしてはごくごくシンプル。
時代はローマ。イギリスのハドリアヌスの壁付近のローマ軍の守備隊が北からの蛮族(というか地元民)の
襲撃を受けて5千の兵が全滅、軍団のシンボルである鷲の旗印もどこかへ持ち去られてしまう。
その時に守備隊長だった男の息子は、父が実際にどう行動したのかに長年不安を抱き、
長じて自分も軍人になり、同じ場所への配属を希望し着任する。
着任後の戦闘で怪我をし、早々に名誉除隊になり、悶々とした日々を送っていた折、父が失ったとされる
鷲の旗印が遠い蛮族の地にあるという噂を聞き、それを取り戻すために北へと旅立つ。
同行者は、命を救って以来奴隷として傍らにある蛮族の若者。しかし彼の心底はわからない。

……という話だと思ってわたしは見たのだが、話としてはちょっと違っているようだ。
シンプルな話をシンプルに説明出来ない自分の説明能力の無さが無念である。

何が良かったんだろうな。まずは映像美かな。
わたしはすっかりスコットランド高地の美しい風景だと思って見ていたのだが、ハンガリーでも撮影をしたそうだ。
いずれにしても、いいですよ。あの荒涼とした風景を、なぜ美しいと感じるのか、
温帯湿潤な日本生まれ日本育ちの自分としては疑問なのだが。
生きて行くのにしんどそうな場所を、なぜ美しいと感じるのでしょうね。砂漠とかね。ウユニ塩湖とかね。

逃亡兵士と出会う森も、クライマックス以降の舞台である川も、美しかったですね。
上手く撮ってた。これ見よがしではない美しさ。

次に、セット及び衣装ですかね。これもやり過ぎることはなく。
むしろ一つ一つ取り上げて、ここが良かったと言えないくらいさりげなく良かったかもね。
ローマ時代の、しかも辺境の考証なんかは全くわからないが、それっぽかったしね。
北部部族の全身彩色はけっこう驚いたけどね。刺青風に彩色するのはいくらでも見たが、
全部に塗ったくるのは初。

役者も良かったですね。
もうそれはそれは地味で。イケメンが2人主役で、あとは主人公の叔父さんと、脇役もほぼおっさん、
モブも、おにーちゃんもいるけどだいたいがおっさん。
おっさん嫌いのわたしが、その数の多さが全く気にならなかった。
女性要素がここまでない映画でそこまで殺伐としていないのは、稀有だと思います。
狙ってやれているのならスゴイ。風景が女性要素を担っているのかも。

主役2人とも静かな演技で。
チャニング・テイタムという人は初。多分「パブリック・エネミーズ」で見てる筈だが、
記憶には全くない。寡黙さに少し勿体ぶったようなところがあるけれども嫌味はなく。
逞しく成長した息子が、それでも父の勇気に疑問を持って生きて来た鬱屈が素直に表れていた。

ジェイミー・ベルという人は初耳。……と言おうとしたが、おっと。
先日見たミア・ワコウシスカ版の「ジェイン・エア」のセントジョン・リバースですか。
まああれは超特急のストーリー展開だったので、覚えてなくても仕方がない。

今回の蛮族役は、それにしては線が細いかなという多少のイメージの差はあれども、
2人並んだところのバランスで見れば良い。
ただ、この2人の体格差でエスカがマーカスを「奴隷だ」と言っても全く説得力がないところが問題ですが。
それを北部部族が信じるかね?怪しまれそうだよね。

最後はめでたしめでたしで終わって吉。まあわたしは後味がいい方が好きですから。

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