「黄金伝説」というと、ヤコブス・デ・ウォラギネのあれかと思うので、てっきりキリスト教関連の
何かかと思ったのだが、ごくごくストレートに金製品の展示会でした。
宮城県美術館で開催中。
まさに展示会と言いたいくらい物が数多く並んでいた。展示品番号からすると300超。
物としては耳飾り、首飾り、腕輪の類がとても多くて、大雑把に見るとあまり変わり映えはしないんだけどね。
今回はけっこう細部をじっくり見る集中力があったので、なかなか面白かった。
とにかくまあ金細工の粒金の細かさといったら!!
あれは……0.1ミリとかそういう世界なのかなあ。もっと小さいのかなあ。
アンタいったいどうやって!と言いたい細かさ。あれをどうやってくっつけていったかね。
前にテレビで古代の粒金技術についてドキュメタリーをやっていた時も、現代では出来ない技術だと言っていた。
ほんとにすごいんですよ。
同工異曲といったらむしろ否定的な意見になるかもしれないが、そういうものを一つ一つ、
こまけー、こまけーと呟きながら見ていた。
半分以上に粒金が使われていた印象だが、粒金であえて一つ上げるとしたら「動物模様のある留め金」。
1センチくらいのライオン?に張り巡らせてあるほそーい線が全部粒金で出来ているんだからね。
その量と言ったら。
展示品の写真がほとんど見当たらないので、全然中身の話が出来ないのだが、
展示品番号でいえば、110-1の耳飾りはサイコロ型と変型八面体を組み合わせたもので、
今でも市販されていて全然おかしくないモダンさだし、
110-3の腕輪は、……えー、持ち主の人名が原稿用紙の枠内にアルファベットで書いてあり、
それを枠ごと切り取って繋げたような、ありそうで今まで見たことなかった面白いデザイン。
139は植木鉢に花を咲かせた可愛いデザインの耳飾り。
カタログの表紙になっている、直径5センチくらいのペンダントトップは、日本人が見ると梅の花に見える
花が8つ丸くまとめてある。紀元前5、6世紀のものだけど、中世日本の漆芸デザインにあってもおかしくない。
ところで展示品リストにはせめて出土場所くらいは載せておいてくれないか……。
トラキア文明で、すごい物が出た場所があったんだけど、ネット上で探せないね。
手元のチラシでかろうじて確認が出来るけど、せめてサイトには載せておいて欲しい。
トラキアのヴァルチトラン遺宝。パナギュリシュテ遺宝。
前者は、合計12キロの金製品が出たそうで、全体的にシンプル。板としてのデザイン。
紀元前14世紀にこのなめらかな金の板の加工技術は、驚くべきものだと思う。
すごくなめらかで、デザインも洗練されている。
後者は紀元前4世紀、こってりしたデザインで、うーん、まああえて言うなら人頭や動物のリュトンなどから
クレタ文明あたりと若干似ているように感じる。金のギラギラした量感がものすごい。
円盤状の大きな杯?(フィアレというそうだが……。情報が少なすぎるぞ)
良かった、画像があった。
これ、たしか説明に顔がアフリカ系の顔だろう、と書いてあった気がするので、
ブルガリアとアフリカの紀元前4世紀の交流……面白いです。
でも世界地図を見ると、ブルガリアとクレタやアフリカなんて船で近いね。
トラキア文明の関連本って日本でほんと出てないのよねー。
前に何度かトラキア文明について知りたくて、関連図書を検索したんだけど、
まるで化かされたようにほぼ何もない。
こんな立派な金製品が出て、高度な文明があったのは確実な地域なのに、なんで日本の出版界は
こんなにきれいに無視しているのか。不思議でならない。
ブルガリア文明とか言われ始めてから、少なくとも30年くらいは経っている筈なので、
そろそろ一般書の1冊や2冊や3冊、出ててもいいと思いますよ。
そして、今後歴史学者になろうという若者にはトラキア文明オススメします。おそらく日本での第一人者には
すぐなれる。(←確実な根拠はない)
はよ誰か何かを書いてくれ。
あ、そうそう、同じくブルガリアはヴァルナ出土、ヴァルナ銅石器時代墓地第43号墓の出土物の復元?も見どころ。
6千年前。……紀元前40世紀ですか。ですよね?
レプリカの人骨を見て、「人骨を見て、せめて男性か女性かくらいはわかるようになりたいな」と
ふと思ったのは多分に「BONES」からの影響と思われる。
とにかくその細かさにびっくりするエキシビ。
あまり期待値は高くなかったけど、面白かったです。
そして細かさに疲れた時の箸休めとして、絵画作品や彫刻作品、むりくりこじつけで持って来たのは
明白だけど、いい働きをしていました。そのせいで統一感は薄れたけどね。
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