荒俣宏はよくテレビに出ていて、知識の宝庫、おどろおどろしいことが大好きで、
アヤシゲな人物……というイメージがあるのだが、これが小説となると普通。まとも。あっさり仕様。
肩すかしを食うほど。
今回のこれも、道具立てはちょっとコッテリ風味なんだけど(信長をアレクサンドロス大王の再来と見立てる)
実際読んで見るとけっこうまともにアレクサンドロスの生涯を追っていて……
まあたしかに母の宗教的狂乱とかを大きく描いて、妖しげな雰囲気を狙っている気配はすれども、
……意図したよりはだいぶ理性的ですよね、多分。
彼は妖怪とかとても好きなんだろうけど、実際に妖気に浸れる人かというと実は違う。
なんていうのかしら、好きなのにその内側には入れないというか。
熱狂出来ない。理性を捨てられない。それはおそらく本人にとっては残念なことなのではないか。
全3巻の2巻まではサクサク。そんなトンデモな見立てでそこまでサクサクでいいのかっていうほど。
実にマトモ。
しかし3巻になるとだいぶシツコクなり。ダレイオス相手の戦いをじっくり書いているのだが、
……わたしはこの辺は、停滞と感じるなあ。戦記を書きたかったんだろうなあとは思うものの、
あんまりのめりこめない。むしろ1巻2巻のサクサクの方がいいかも。
まあ正直、信長≒アレクサンドロス大王という見立てもそんなに効果的な気はしない……
ただアレクサンドロス大王の伝記にがっぷり四つに取り組むというのが高難度なので
幻想風にしてみましたという飾りの印象が強いな。
要は総じて評価は高くない。面白くないわけではないが。
小説よりもエッセイで、エッセイよりも実は語り口で面白みが出るタイプかも。
いずれは「帝都物語」も読んでみようと思うが。これはだいぶ流行ったし、
もしかして驚天動地の面白さだったりするのかね?いやいや、ハードルを上げるのはやめよう。
期待しすぎるのは失敗の源である。
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ちょっとこの表紙ではわたしは退く……。
まあわたしは図書館派ですから、単行本で読んだのでいいんですけどね。
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